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「そりゃ、確かに仕事も好きだったけど。でも結婚して、考えも変わったんだよ。俺はちゃんと、いい主夫になる。せっかくレシピももらったし、料理の腕を磨くよ。お前だけじゃなく、お義父さんやお義母さんにも振る舞いたい。ほら、お義母さんには挨拶もまだなわけだし。それをきっかけに、仲良くなれたらなって」
とっさに思いついた詭弁である。でも、まんざら悪いアイデアでもないな、と蘭は思った。取りあえずは、白柳家に出入りする口実を作らねばならない。だが陽介は、渋い顔をした。
「蘭の気持ちは嬉しいけど……。はっきり言って、止めた方がいい。うちの母親は、食にこだわりがあるぞ? 下手な料理を持参したら、逆効果だ」
「下手って、決めつけるなよ」
「友達が渡したレシピをチラッと見た。君は、カレーも満足に作れないのか?」
確かに、最初のメニューはカレーだった。目ざとい奴め、と蘭は歯ぎしりした。
「うるさいな……。とにかく、やるったらやるんだよ。めざましく上達するかもしれないだろ?」
「ハイハイ、期待してるよ」
陽介は、からかうようにくすりと笑うと、立ち上がった。
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