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”
「ま、仕事の件は考えておいて。蘭がその気になったら、いつでも紹介するから……。じゃあ俺は、シャワーを浴びてくる。……そうだ、一緒に入るか? 新婚らしく」
蘭は、陽介をこづいた。
「バカ言え。さっさと入ってこい」
ちぇっと不満そうにしながらも、陽介は渋々バスルームへと消えた。蘭は食卓を片付けると、悠が書いたレシピを広げた。味噌汁やチャーハン、ベーコンエッグなど、ごく基本的なメニューから始まっている。とはいえ、これまでコンビニ飯と外食オンリーだった蘭からすれば、それすら上手に作る自信はない。
――どれからやってみるかな……。てか、献立に悩むって、新婚ぽくないか? いや、何言ってる。陽介に毒されるな。
そんな脳内一人漫才を繰り広げていると、早くも陽介が戻ってきた。
「お先」
「もう上がったのかよ? ちゃんと洗ったか?」
「待ちきれなくてね」
陽介は、蘭を軽く抱きしめた。シャンプーの良い香りがする。止めろ、と蘭は身をよじった。無性に、照れくさい。
「なら、寝室へ行ってるよ。君も早く来い」
「わかった、わかった。ったく、スケベなんだから」
こんなやり取りも新婚カップルって感じだな、などと思いながら、蘭はバスルームへ向かった。
――あいつはまだ、俺が妊娠してるかもと思ってるんだよな。なら今夜も、前回みたいに指でするだけかな……。
とはいえ、綺麗にしておくに越したことはないだろう。念入りに体を清めてから、蘭は寝室へと向かった。一応ノックして、ドアを開ける。
「お待たせ……」
だが蘭の言葉は、途中で途切れた。部屋の中では、恐ろしい形相をした陽介が仁王立ちになっていたのだ。彼は、蘭の元につかつかと歩み寄った。
「蘭。これは一体何だ」
陽介は蘭に、一枚の小さな白い紙を突きつけた。近づいてよく見た蘭は、血の気が引くのを感じた。それは、アフターピルのレシートだった。
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