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蘭は、自分の過去を振り返っていた。養護施設の職員たちは皆優しかったが、やはり普通の家庭で暮らしてみたかった。だが、他の子供たちが次々と養子にもらわれていく中で、蘭にはなかなか引き取り手が現れなかった。
七歳の時、ようやく蘭にも養子縁組の話が持ち上がった。頻繁に会いにきてくれるその夫婦に、親になってほしいと蘭は期待した。一生懸命行儀良く振る舞って、彼らに好かれようとした。幸いにも、特に夫の方は、蘭を気に入ったようだった。
ところがその話は、破談になった。そして蘭は、妻と施設の職員が話しているのを、偶然聞いてしまったのだ。妻は、ひどく怒っていた。
『いやらしい子ね! うちの夫にベタベタして、気持ち悪いったらありゃしない』
『考えすぎですよ。七歳ですよ? 甘えていただけでしょう』
職員は取りなそうとしたが、妻の怒りは収まらなかった。
『最初から、綺麗すぎると思ってたのよ。年の割には、妙な色気もあるし。あんな子を引き取ったら、絶対に将来、恋愛沙汰で揉めごとを起こすに決まってるわ。とにかく、この話はなかったことにしてちょうだい!』
『わかりました』
職員はため息をついた。そして、こう漏らしたのだった。
『正直、同じことを仰ったご夫婦は、以前にも何組かいらっしゃったんですよ。綺麗すぎて不安だって。それで蘭くんは、なかなか縁組が決まらなくて……』
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