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 躰は火照るし、蕾の奥はじくじくと疼く。間違いない、と蘭はうんざりした。全くの時期外れだというのに。陽介に無理やり抱かれたせいだろうか。前回の講演会の時といい、周期が狂うのはこれで二度目だ。  ――あいつと関わってから、ロクなことがないな……。  その時、スマホが鳴った。悠からだった。 『蘭? 最近ちっとも話せてないから、どうしてるかと思って』  相変わらずのんびりした口調で、悠が言う。ピルのレシート事件以来、蘭は悠を避けていたのだ。 「うん、まあ、何かと忙しくて」  蘭は、あいまいに答えた。 『そりゃ、結婚なんて一大イベントだもんね』  悠は、それ以上詮索はしなかった。 『……でさ、蘭。そんな時に悪いんだけど、僕も困ってるんだ。ほら、例のセクハラ問題』 「あー、まだ続いてる?」  うん、と悠は深刻な声を出した。 『この前の陽介先生のアドバイス通り、証拠を集めようとしたんだけど、なかなか難しくてさ。やっぱり、『オメガの会』に相談しようかなあ?』 「え、それは止めとけよ」  蘭はあわてた。悠が騙されたりしたら、かわいそうだ。 「あまり評判良くないらしいぞ?」 『そうなの? でもなあ……』  しばし考え込んだ後、悠はこう言い出した。 『じゃあさ。陽介先生に、もう一度相談させてもらえないかな? 今晩、お邪魔してもいい?』 「――いや、それはちょっと」  あれもこれもダメ、と言うのは気が引けたが、蘭は渋った。レシートの件もさることながら、陽介から家に上げるなと言われたのを思い出したのだ。これ以上、陽介との喧嘩の種を作りたくなかった。それに、海を見られてもまずい。 「陽介、今晩留守なんだよ」 『あれ?』  すると悠は、怪訝そうな声を上げた。 『地方講演は、もう終えられたんじゃなかったっけ?』  蘭は、眉をひそめた。  ――何でそれを知ってる……?

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