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 勲の姿がなくなると、陽介は蘭のそばにひざまずいた。 「悪かったな。今日はちゃんと帰るつもりだったんだが、遅くなってしまって……。実は、父の事務所のスタッフを抱き込んで、父の動向を見張らせていたんだ。あの異常なオメガ好きからして、蘭に目を付けるのではないかと懸念していた。このマンションへ向かったと情報を得て、飛んで帰ってきたんだ」 「……信じて、くれるんだな? 襲われたこと……」  ああ、と陽介がうなずく。蘭の瞳からは、思わず涙がこぼれ落ちた。 「よかった……。お前のこと傷つけてばかりだから、もう信用してもらえないかと思って……。昨日一緒にいた奴とは、本当に何でもないんだよ。あいつは稲本っていって、『日暮新聞』時代の同期だ。確かにカフェで何度か会ったけど、話をしただけだ。それ以上のことはない。……でも、お前に黙ってたのは悪かった。それは、謝る」  蘭は、一気にまくし立てた。さすがに会っていた目的は言えないが、浮気でないことだけは信じてほしかったのだ。すると陽介は、蘭をふわりと抱きしめた。 「信じるよ」 「――! 本当に……?」 「ああ。俺も逆上して悪かった。そいつと一緒にいる姿を見たら、頭に血が上って……」  陽介の言葉の途中で、蘭は彼の首に腕を回した。そっと引き寄せ、キスをする。陽介は、驚いたように目を見開いた。 「蘭……?」 「信じてくれて、嬉しい」  言いながら、陽介の背広の上着に手をかける。乱暴に脱がせようとする蘭に、陽介は戸惑ったようだった。 「蘭。我慢できないのはわかるが……、ここでか?」 「いいだろ。俺、もう限界……」  陽介の見ている前で、脚を擦り合わせる。誘惑しようとしているのではなく、本能だ。尻からは、すでにオメガ特有の分泌液が滴っている。早く陽介が欲しくて、仕方なかった。だが陽介は、そんな蘭を押しとどめた。

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