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「蘭!? やっぱり、きついか?」  陽介が、あわてたように動きを止める。引き抜かせまいと、蘭は、とっさに後ろに力を込めた。 「――! そんなに、締めたら……」 「好き。陽介、好き……」  この想いが届きますように、そんな祈りを込めて、陽介を見つめる。すると、彼の瞳は揺れた。その言葉を信じていいのだろうか、そう言いたげな眼差しだった。 「んっ……、中に、出して……」  言葉と同時に、大きく腰を揺らめかす。次の瞬間、陽介が中で爆ぜた。 「――あっ……」  じわじわと、熱い感覚が広がっていく。蘭もまた、一拍遅れて達した。陽介の胸に倒れ込むと、彼は優しく髪を撫でてくれた。 「満足したか?」 「まだ……」 「なら、好きなだけ付き合ってやる……」  くるりと、体勢を入れ替えられる。激しく口づけを交わし合いながら、二人はいつ欲望が果てるともなく、互いを貪り合ったのだった。 「君は、ヒートの間隔が短い方なのか?」  それから数時間後。裸のままソファでぴったりと抱き合っていると、陽介が尋ねてきた。 「最初に講演会で会った時から、まだ一か月くらいしか経ってないだろう」 「ううん、むしろ滅多に来ない方。あの時は、イレギュラーだったんだ。今日もそう」  蘭がそう答えると、陽介は何やら考え込んだ。 「そうか……。いや、父がタイミング良くこの家に来たのが、気になってな。父は、ヒート中のオメガを抱くのが好きなんだ。でも、急なヒートなら、やはり偶然か……」  蘭は、勲の来訪前の、悠との電話を思い出した。あの時蘭は、彼にヒート中だと告げた。蘭が今ヒートだと知っているのは、悠だけだ……。

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