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”
「でもお前は、俺を友達としてしか見てくれなかった」
苦しそうに、稲本が続ける。
「それにお前は、しょっちゅうアルファからのセクハラに遭ってて……。そういうのにうんざりしてたじゃないか。でも俺だけは、同じアルファでも信用できるって、言ってくれた。それなのに欲望を見せたりしたら、絶対嫌われると思った。だから気持ちを必死に隠して、友達のふりをしてたんだ」
「……」
「だけど、本当は」
稲本が、さらに一歩近づく。蘭は、思わず身を固くした。
「ずっと触れたくて、抱きたくてたまらなかった。俺だって、アルファなんだよ……。そのうなじを噛んでやりたいって、いつも思ってた。頭の中では、何百回もお前を犯してた……」
「稲本……」
「それなのに」
稲本が手を伸ばし、蘭の首筋に触れる。
「白柳陽介なんかの番にされやがって……、畜生! あいつをぶっ殺してやりたい!」
蘭は、稲本の手を振り払うと、彼をにらみつけた。
「……なら、何で作戦に協力なんかしたんだよ!」
稲本は、一瞬口ごもった。
「そりゃ止めさせたかったけど……、お前は、言い出したら聞かないし。俺を相棒に選んでくれたのも、嬉しかったから。それに、まさか番になるとは思わないだろ……。お前、番は一生作らない、って宣言してたから」
稲本が、不意に蘭の肩をぐいとつかむ。蘭は抵抗しようとしたが、強引に後ろを向かされた。
「止めろ……」
「この噛み痕を付けるのは、俺のはずだったのに! いっそ、上書きしてやりたい……」
避ける間もなく、うなじに吸い付かれた。
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