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 頭を下げたまま、蘭は一気にまくし立てた。万一殴られた時のために、海を庇うスタンバイをしている。 「でも、お前のことは本気で好きだ。最初は利用する目的だったけど、お前と番になって結婚して、接していくうちに惹かれていった。お前は優しいし、オメガのことも尊重してくれるし、何より他人への、深い思いやりがある……。それから海のことだけど、稲本には計画の都合上話さざるを得なかったが、口止めはしてた。……陽介、俺を許してくれとは言わない。どんな目に遭わせてくれてもいい。でも、この二つだけは信じてくれ!」  陽介は、黙ったままだ。蘭は、おそるおそる顔を上げた。すると彼は、意外にも穏やかな表情を浮かべていた。 「――これまでに、俺が君を信じなかったことはあるか?」  陽介は、静かに言った。蘭は、目頭が熱くなるのを感じた。 「陽介……」 「詳しい話は、今夜帰ってからゆっくり聞く。それから週刊誌の件は、俺が何とかする」 「俺に何かできることは?」  蘭は勢い込んだが、陽介は何も、と答えた。 「君はマンションへ帰って、海の世話をしていてくれ。運転、気をつけてな」  そう言うと陽介は、海ごと蘭をふわりと抱きしめた。  その晩遅く、陽介は帰宅した。蘭は、走って迎え出た。海はすでに、ぐっすり眠っている。今日はあちこち連れ回したから、疲れたのだろう。 「どうだった?」  息せき切って尋ねると、陽介はにやりと笑った。 「白柳陽介を、なめるなよ。写真はデータごと奪い返して、記事はもみ消した。君は安心していればいい」  蘭は、ほうっとため息をついた。 「上がって。何か食うか? 一応、夜食は作っておいた。口に合うか、わからないけど……」 「ありがとう。いただくよ。ビールはあるか?」 「うん、待ってて」  缶ビールと、手製の煮物を食卓に並べる。見た目はまだまだ無骨だが、蘭の力作である。陽介は、一口食べて微笑んだ。 「美味い。前回の野菜炒めもどきからは、進歩したようだな」  そういえば、あの処女作も食べてくれたんだっけ、と思い出して蘭は赤くなった。あの時は切り方も無茶苦茶で、焦げまくっていたというのに……。 「本当に、ごめんな」  蘭は、ぽつりと言った。 「お前を騙してて。それも、お前の父親を攻撃しようとしていた……」 「ああ、そのことだが。事情を説明してくれるか? なぜ父を狙ったんだ?」

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