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「――いつの間に作ったんだよ?」  蘭は、顔がほころぶのを抑えきれなかった。 「蘭の意見を聞いてから作るつもりだったけど、選挙が始まったら忙しくなるしな。やはり、早く形にしたくて」  陽介は、蘭の問いには答えずに微笑んだ。 「ほら、手を貸して」  素直に手を出した蘭の指に、陽介が指輪をはめてくれる。例によってサイズはぴったりで、蘭は思わず笑ってしまった。 「ほら、お前も」  陽介の手を出させ、はめてやる。すると陽介は、蘭の手首をぐいとつかんだ。そのまま、テーブル越しに抱き寄せられる。 「――おい!」 「指輪の交換後といえば、誓いのキスだろう」  茶化す隙も与えず、陽介は口づけてきた。触れるだけの、ごく優しいキスだ。性的なニュアンスは、それほどない。むしろ、精神的な愛情が感じられた。  ――気持ちいい。  蘭は腕を伸ばすと、陽介の首に回した。このままずっと、こうしていたいくらいだった。だが陽介は、唐突に唇を離した。妙に険しい目つきで見すえられ、蘭は戸惑った。 「何……?」 「一つ、確認しておきたいことがある。稲本晃也という、君の相方についてだ」 「何だよ……。ていうか、フルネーム調べたのか?」 「当たり前だ。君の周辺をうろつく男を、俺が黙って見過ごすわけないだろう……。稲本晃也、アルファ、二十八歳。『日暮新聞』記者。昨年から本社政治部に配属になったが、一匹狼で勝手な行動が多い」  相変わらず行動の速い奴だ、と蘭は呆れた。 「仲間割れしたと言ったな? 原因は何だ?」  弱ったな、と蘭は思った。本当の事情を打ち明ければ、陽介はすぐにも稲本を殺しに行きかねない気がした。 「ええと……」 「そいつは、君に惚れたんじゃないのか?」  蘭はぎょっとした。

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