121 / 257
”
「図星か」
陽介が、にやりと笑う。
「――何で、それを?」
「『オメガの会』で君ら三人を見かけた時に気づいた。そいつが、君を見る目つきでな。後は、俺の直感だ。同じ人間に惚れた者同士の」
「ごめんな」
蘭は、ぺこりと頭を下げた。
「俺の方は、ずっと友達だと思ってたんだ。勲先生を失脚させてやる、と俺が息巻いていた時、あいつが協力すると申し出てくれた。自分も、勲先生が嫌いだからと……。信用して、今まで一緒にやってきたけど、あいつの気持ちには気づかなかった。俺がお前と結婚して、好きになったことで、逆上したみたいだ。お前や海を巻き込んで、本当に申し訳なかった」
「気にするな」
陽介は、ぽんぽんと蘭の頭を撫でた。
「俺だって、自分の子だという誤解を解かなかったわけだし……。記事にはならないんだから、蘭は気に病まなくていい」
「本当か?」
蘭は、ほっとして顔を上げた。
「ああ。でももう、そいつとは会うなよ?」
「わかってる! 稲本には、絶交だと言い渡した。二度と連絡も取らないから、安心しろ」
「それならいいが。蘭は自分の魅力に鈍感だから、気がもめて仕方ないんだ……。父の時といい、今回といい」
陽介は、ぶつぶつ言った。
「俺はこれから、選挙活動で家を空けることが多くなるが、おとなしくしてろよ?」
「わかったよ」
蘭は、口をとがらせた。
「ったく、ヤキモチ焼きなんだからな~」
「蘭が魅力的すぎるからだ」
陽介が、再び抱きしめてくる。二匹の子犬のようにじゃれ合いながら、蘭は幸福に酔いしれた。この後とんでもない事態が二人を待ち受けているとは、夢にも思わずに。
ともだちにシェアしよう!