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12 二人の決意

 その翌日、蘭が海にミルクを飲ませていると、陽介が部屋に入ってきた。 「手伝うか?」 「いや、平気」 「そうか」  陽介は、愛おしそうに海の顔をのぞきこんだ。 「何だかこいつ、急に大きくなったと思わないか?」 「生後一ヶ月って、成長する時期なんだって」  陽介が用意したガイドブック以外にも、蘭は育児本を買ってあれこれ勉強したのである。 「すっかり、立派なママだな。いつ二人目ができても大丈夫そうだ」  陽介が、腰を抱いてくる。くすぐったい、と蘭は身をよじった。 「あ、そういえば気になってたんだけど。この子、健診に連れて行かなくていいのかな? 一ヶ月だろ。まさか、俺が連れてくわけにもいかないし……」 「健診ねえ」  陽介も、それは思いつかなかったらしい。しばらく考えてから、彼はこう言い出した。 「それならその時だけ、実の母親の所へ戻そうか。彼女も、海に会いたがっているしね。……それに」  陽介は、ふと顔をくもらせた。 「ここだけの話だが、海の母親の容態はよろしくない。おそらくは、永くもたないだろう。会える時に、会わせてやりたい」 「――そうなんだ」  勲に傷つけられた上、命までも危ないというのか。蘭は、伊代が気の毒でたまらなくなった。するとその時、スマホが通知音を告げた。見ると、勲からだった。 『蘭さんに頼まれていた、沢木薫子さんとの会談の件。日時が決まったので、お知らせする……』

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