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「陽介、チャンスだぞ!」  蘭は、早速内容を陽介に伝えたが、彼は眉をひそめた。 「危険だと言っただろう。会うなら、俺も付いていく」 「ダメだって。オメガ同士の連帯感を利用して、話を引き出すつもりなんだから。アルファのお前が付いてきたら、それができないだろ? 相手はオメガで女だ、心配すんなよ。第一俺は、白柳勲幹事長の、息子の嫁なんだから。向こうだって変な真似するわけないって」 「……まあ、確かにそうだが」  陽介は、渋々うなずいた。 「だが、くれぐれも油断はするなよ? ……ああそうだ、それならその時間、俺が海を、母親に会わせに行ってこようか」 「お、それ、いいアイデアだな」  蘭は、賛成した。 「でもお前、忙しいのに平気か?」  まだ公示前とはいえ、陽介にはやることが山積みなのである。 「一日くらい、どうってことはない」 「そうか? 何か、悪いな……。俺、何も手伝わなくて」 「古城さんがしっかりサポートしてくれるから、蘭は心配しなくていい」  蘭はそこで、古城と事務所で会った時のことを思い出した。 「そういえば、古城さんてどういう人なの?」 「元々、父の秘書をしていた人だ」  陽介は、あっさり答えた。 「俺が政界進出するにあたって、俺の秘書になってくれた。長い付き合いだが、信頼できる人だよ。少し年の離れた兄貴ってとこかな」  陽介がそこまで言うなら大丈夫かな、と蘭は安堵した。 「ちなみに、飲んべえだって言ってたけど、そうなの? しょっちゅう外で飲むタイプ?」 「ああ。飲み代のことでは、奥さんに叱られてばかりいるそうだよ」  本人の証言と一致する。悠の店を訪れていたのはやはり偶然か、と蘭は納得した。 「そういうわけで、選挙については、蘭は気を遣わなくていい。海の世話だけして、のんびりしてろ」  陽介は、蘭を安心させるように微笑んだのだった。

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