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『オメガの会』を出ると、蘭は陽介に、終了した旨のメッセ―ジを送った。やや早めに切り上げられてしまったが、盗聴器を仕掛けられたのは収穫だ。これで、執務室内での会話を盗み聞きできる。何らかの手がかりが、つかめるかもしれない。  陽介からは、すぐに返信が来た。 『こちらも無事健診が終わった。海の成長は順調だそうだ』  蘭は、ほっと胸を撫で下ろした。陽介は、伊代が出産した産婦人科に、彼女と海を車で連れていったのである。伊代は、入院している病院に外出許可を取ったそうだ。 『よかった。じゃあ俺は、先にマンションへ帰る』  すると陽介から、こんなメッセ―ジが来た。 『実は伊代さんが、蘭に挨拶したがっている。産科へ寄ってもらえないか? 今から彼女を、入院先の病院へ送り届けるんだ。車の中で話せるだろう』  確かに、現在地から産科までは近い。蘭は、快諾した。  蘭が産科へ到着すると、伊代は陽介の車から出てきて、深々とお辞儀をした。いかにもオメガらしい、小柄でほっそりした女性だ。腕には、しっかりと海を抱いている。 「海のことでは、本当にお世話になりまして。何とお礼を申し上げてよいやら」 「とんでもないです。海君、とても可愛くて。楽しくお世話していますよ」  すると陽介が、運転席から声をかけた。 「蘭、乗って。伊代さんも、早く車内へ戻った方がいい。今日は、外出して疲れたでしょう」  確かに伊代の顔色は、良くない。蘭と彼女は、二人して後部座席に乗り込んだ。すると伊代は、再び礼を述べた。 「蘭さん、ありがとうございます。今日の健診でも、お医者さんに褒められました。元気に育っているって。蘭さんのおかげです」 「とんでもない。僕は何も」  蘭は、あわてて否定した。むしろ、蘭の都合であちこち連れ回してしまったというのに。すると伊代は、蘭をじっと見つめた。 「この上、厚かましすぎるお願いで恐縮なのですが。私にもしものことがあったら、海をお願いできますか?」

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