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”
――そりゃ、俺だってできれば、友達に戻りたいけど……。
蘭は一つため息をつくと、稲本が送ってきた資料を開いた。沢木薫子の経歴について、詳しくつづられている。蘭もまさに、調べようとしていたところだ。稲本に簡潔に礼のメッセ―ジだけ送ると、蘭は資料を読み始めた。
沢木の家庭は母一人子一人で、経済的には苦しかったらしい。高校時代からバイトに明け暮れていた、と資料にはあった。奨学金でどうにか大学へ進学した後、政財界の人間との人脈作りに奔走し、『オメガの会』その他いくつかの企業を設立した、とのことだった。
そして気になる男性関係だが、沢木はその辺りは巧妙らしく、子供の父親に関する情報は、特段記載がなかった。
――せっかく稲本が、連絡先を添付してくれたし、同級生とやらにコンタクトを取ってみるか……。
その前に、と蘭はスマホを手に取った。陽介は、どうしているのだろう。もう夜になるが、彼から何も連絡はない。講演は、無事終わったのだろうか。前回の講演時は、喧嘩していたから仕方ないが、今回は一言くらい報告があってもよさそうなものだ。
蘭は、SNSを開いた。陽介の公式SNSは、全て秘書の古城が更新しているのである。きっと、講演会の様子も掲載しているはずだ。しかし、陽介のアカウントを探そうとした蘭の目は、トレンド欄に釘付けになった。
『白柳陽介不倫』
――何だって!?
あわてて、投稿を追う。すると、写真が出てきた。他ならぬ陽介が、ホテルの部屋に、若い男性を引き入れている光景だった。写真を拡大して、蘭はあっと声を上げそうになった。――その男は、悠だった。
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