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掲載時刻は、約三十分前だった。皆、興奮してコメントしている。
『新婚のくせに、ゲスだな』
『地方講演のたびに、繰り返してるんじゃね?』
『落選確定』
蘭は、すぐに陽介の携帯に電話をかけた。しばしのコール音の後、ようやく電話はつながった。
『もしもし』
それを聞いて、蘭は凍り付いた。悠の声だったのだ。
「何で、悠が出るんだよ。ていうか、そこ、どこだ!?」
思わず怒鳴った蘭とは対照的に、悠はけろりとしていた。
『陽介の部屋だけど?』
――陽介、だと?
『今、一緒にいるんだ。あまり大きな声出さないでよね。彼が起きちゃう』
「嘘つくなよ。陽介が、お前を部屋に入れるわけないだろ!」
言い返しながらも、蘭は一抹の不安を覚えた。悠が陽介の部屋を訪れたのは、SNSの投稿により、確かだ。つまり悠は、部屋番号を知っていた……。
『蘭、往生際が悪いよ』
悠が、はーっとため息をつく。
『これを見たら、蘭も納得するでしょ?』
悠が、スマホをビデオ通話に切り替える。映った光景に、蘭は言葉を失った。ホテルのベッドで、悠と陽介が一緒に寝ている。二人とも全裸だった。陽介は眠っているのか、目を閉じてぴくりともしない。
「何……で……」
柄にもなく、声が震える。悠は、くすりと笑った。
『どうしてショック受けてるの? 陽介のことなんか好きじゃないって、言ってたじゃん』
「だからって……」
『僕は愛してるよ、陽介のこと……。彼も、愛してるって言ってくれた。蘭よりも好きだって。今まで、ずっと抱かれてたんだ』
悠が、勝ち誇ったような笑いを浮かべる。二十年以上の付き合いになるが、悠のこんな表情を見たのは初めてだった。
『それに』
悠は、後ろ髪をかき上げると、画面にうなじを映した。蘭は、愕然とした。そこには、くっきりとした噛み痕が付いていたのだ。
『陽介は僕のこと、番にしてくれたよ。これで僕らは対等な立場だね、蘭』
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