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「何言って……」  蘭は、まだ信じられなかった。悠が、歌うように言う。 『あー、ここまで長かった。いろんな手を使ってみたけど、陽介、なかなか落ちないしさ。セクハラ被害をでっち上げても、二人きりでは相談にも乗ってくれないし』 「でっち上げだと? あの話、嘘かよ?」  蘭は、カッとなった。 「よくも、あれこれ画策してくれたな! アフターピルのレシートを、寝室に落としたのもお前だろう!」 『ああ、あれね。気づいてたんだ』  悠は、あくまでもけろりとしていた。 『でも、元はといえば、蘭が陽介に隠れてそんなことするから悪いんじゃん?』 「――お前を見損なったよ、悠」  蘭は、低い声で告げた。 「自分の欲得のために、俺を裏切って……。古城さんまで利用したな? 知ってんだよ。彼、お前の居酒屋に来てただろう。彼から、陽介のホテルの部屋番号を聞いたな?」 『ああ、古城さん?』  悠は、こともなげに答えた。 『別に、僕が一方的に利用したわけじゃないよ。向こうだって、僕と楽しんだんだ。彼、オメガと経験がなかったみたいだね。誘ったら、最初はためらってたけど、途中からはがっついてた。だから、ウィンウィン……』  古城はベータだが、ベータの男の中にも、オメガとのセックスに興味を抱く者は多い。ヒート中にフェロモンで誘惑されたら、逆らえないだろう。ギリ、と蘭は歯を食いしばった。 「何がウィンウィンだ! 古城さんとも寝たのかよ、この淫売が!」 『淫売は蘭の方だろ』  不意に、悠の声が低くなった。 『結婚してるのに稲本さんと密会したり、ヒート中に勲先生を家に引き込んだりさ』  まさか、と蘭は愕然とした。 「全部、お前の仕業か! 稲本との写真を陽介に送ったのも、勲に、俺がヒートだと密告したのも……」

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