139 / 257
”
『大正解』
悠が、げらげらと笑う。蘭は、ぎゅっと拳を握りしめた。
「いくら陽介を好きだからって……、よくも親友の俺に、そこまでできたな。マスコミに就職したのも、白柳勲を倒そうとしたのも、半分はお前のためだったっていうのに……」
『ああ、そういえば、張り切ってたよね。オメガのレイプ被害の記事を書くってさ』
悠はなぜか、くすりと笑った。
『残念だったねえ? 握りつぶされて。確か、××建設の社長が起こした事件だったよね』
蘭は、眉をひそめた。いくら親友だからといって、さすがにそんな具体的な内容は話していないというのに……。
「何で知ってる?」
すると悠は、とんでもないことを告げた。
『知ってるも、何も。こういう記事が出るそうですよって情報を勲先生に流したのは、僕だからさ』
「――何だって!?」
蘭は、耳を疑った。
『うちの居酒屋に、『日暮新聞』の社会部の人が来たんだよね。酒に酔って、べらべら喋ったんだよ。オメガの新人記者が、今度こんな記事を出すんだって。社会部の新人記者でオメガって、蘭のことだなって、ピンときた。正直、蘭にはムカついてたからさあ。自分一人、一流企業に入って。だからその情報、漏らしてやった。さすが勲先生、見事もみ消してくれたね』
「馬鹿野郎!」
蘭は怒鳴った。
「オメガのレイプ被害を、世間に知らしめるチャンスだったってのに! お前は、同じオメガのくせに、それを邪魔したってのかよ!」
『関係ない』
悠の声は、ぞっとするほど冷たかった。
『むしろ、万々歳かな。不幸なオメガが世の中に増えた方が。だってそうでしょ? 何で僕だけが、苦労しなきゃなんないのさ』
蘭は、愕然とした。
――悠の奴、そこまで歪んでたのか……?
ともだちにシェアしよう!