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 盗聴器は、蘭が取り付けたままになっていた。どうやら、見つからなかったらしい。蘭は、ほっとしながら回収し、鞄にしまった。 「お待たせしました」  そこへ、沢木が戻ってくる。そろそろ帰ります、と蘭は告げた。 「もうですか?」 「はい、今日はありがとうございました」  盗聴器を取り戻した以上、早くこの場を去った方がいいだろう。それに、大阪へも行かなければならない。まだ名残惜しそうな沢木を後に、蘭は海を連れて『オメガの会』を出た。  ――その前に、と。  蘭はスマホを取り出したが、陽介からは何のメッセ―ジも来ていなかった。ますます、腹が立ってくる。  ――真相はどうであれ、俺に釈明すべきだろうが……!  念のため、再度SNSをチェックする。すると、陽介の公式アカウントが更新されていた。何と、白柳陽介事務所から、公式発表が出されているではないか。 『白柳陽介に、不倫の事実はありません。写真のオメガ男性は、白柳の配偶者です』  ――何だと!?  あわてて、画面をスクロールする。内容を要約すると、以下のとおりだった。 『テレビでも宣言したとおり、白柳陽介は、一般オメガ男性と最近入籍した。男性の意向により、彼は公の場には姿を現さなかったが、白柳の政治活動を献身的に支えてきた。平素より事務所を訪れては、スタッフをねぎらってくれた。今回も、地方講演に回る白柳の身を案じて、男性がホテルの部屋に差し入れしたもの……』  早速、多くのコメントが寄せられていた。 『そうだったんだ~。思ったほど美人じゃないけど、優しそうだよね』 『控えめで献身的な奥さん、いいな。陽介先生とお似合い』 「ふざけんな! 嫁は俺だ!」  思わず、絶叫してしまう。その時、また新たなコメントが付いた。 『白柳陽介事務所の近くに住んでるけどさ。確かにこの男性、普段から出入りしてる。やっぱり奥さんだったんだ』  蘭は、目を疑った。  ――悠が、事務所に出入り……?

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