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「真っ先にマンションへ帰ったが、君も海もいないので焦った。愛想を尽かされたかと思ったよ……。まさかこいつの所へ行ったんじゃないかと、アパートまで押しかけた、というわけだ。住所は調査済みだったしな」
陽介が、運転席の稲本を指さす。稲本は、呆れたように肩をすくめた。
「そんなにあわてるくらいなら、もっと身辺を警戒しろよな。……まあ俺も、SNSを見て、市川のことは心配していたんだが。でも、あんなメッセ―ジを送った直後にコンタクトを取るのは、さすがにためらわれてな。つけ込もうとしていると、思われたくなかったから」
――引き際、って言ったばかりだったもんな。
蘭は納得したが、陽介は眉をひそめた。
「メッセ―ジって?」
「お前に教えるもんか」
蘭は、稲本と目線をかわして、にやりと笑った。少しは陽介に、仕返ししたい気分だったのだ。
「……まあ、とにかく。陽介から事情を聞いて、お前ら二人が窮地に追い込まれてるってのはわかった。それで、一緒に市川を探すことにしたんだ。そうこうしているうちに、事務所が発表を出した。市川のことだから、勲の家に押しかけると踏んだんだよ」
稲本が説明する。二人が一緒に行動している理由が、ようやくわかった。
「俺としちゃ、陽介とタッグを組むなんて、冗談じゃなかったけどな。それも、こいつの不始末のせいで。でも、市川のことは心配だったから、協力することにした。あ、ちなみにこいつのその頬は、俺がやった。手伝う代わりに、一発殴らせろってな」
「お前……、承知したのか?」
あぜんとして見つめれば、陽介は苦笑いを浮かべた。
「一刻も早く、君を見つけたかったからな。やむを得ない。それに、俺は責められて当然だ」
たとえそうだとしても、陽介が甘んじて他人に殴られるなんて、蘭は信じられなかった。
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