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『ただ、SNSへの投稿は、私が仕組んだことではありません』  古城は、きっぱりと告げた。 『確かに、相沢悠にねだられて、陽介先生の宿泊先は教えました。それ以前にも、講演日程などの情報を流したこともあります。でも、写真の流出は、予定外でした。単なるアクシデントか、それか相沢本人の仕業か……。ですが、どのみち相沢悠は、陽介先生の妻として世間に公表する予定でした。あなたが仰るとおり、そのために彼には、普段から事務所に顔を出させていました。実行に移すのが、少し早まっただけのことです』 「――陽介は、知ってんのかよ! このこと」  蘭は怒鳴った。古城が、ぐっとつまる。ややあって、彼は絞り出すような声で言った。 『陽介先生も、きっと理解してくださいますよ。息子を当選させたいという、父心をね……』  まさか、と蘭は思った。 「――今までのことって、全部勲先生の差し金なのか?」 『……』 「あんたは、一体どっちの秘書なんだよ!」 『……私は、勲先生に生涯忠誠を誓っていますから』  ぽつりとそれだけ告げると、古城は電話を切った。蘭は、ふと思いついて、悠の勤める居酒屋に電話してみた。素知らぬふりを装って、相沢は今日出勤しているか、と尋ねる。すると店員からは、こんな答が返ってきた。 『相沢なら、先月で辞めましたが』  念のため工場にも電話したが、同じ返答だった。間違いない、と蘭は確信した。蘭と入れ替わって、白柳陽介の妻の座を得るつもりだ。蘭は、その場に呆然と立ち尽くした。  ――悠に乗っ取られる。何もかも……。

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