157 / 257
”
「……ん」
はっと目を開けると、寝室のベッドの上だった。あれから蘭と陽介は、浴室で何時間も交わり続けた。そのうち蘭は、ついに意識を飛ばしてしまったらしいのだ。気がつけば、きちんとパジャマを着せられていた。陽介が体を拭いて、着せてくれたのだろう。
「目が覚めたか? 何か飲むか」
タイミングを計ったように、陽介が寝室に入ってきた。
「うん、水をくれるか?」
「了解」
寝室に備え付けの冷蔵庫から、陽介がペットボトルを出し、グラスに注いでくれる。蘭は寝そべったまま、差し出されたグラスを受け取った。喘ぎすぎて嗄れた喉を、冷たい水が癒やしてくれる。
「体、大丈夫か?」
腰をさする陽介を、蘭はにらみつけた。
「心配するくらいなら、やりすぎんなよ」
「君が挑発したんだろうが。……それに、俺自身確かめたかったからな。あいつと寝たのかどうかを」
陽介は、ぽつりと言った。
「一回やっていたら、君と何回もできないと思うんだが。蘭はどう思う?」
そう尋ねる陽介の顔は大真面目で、蘭は何だかおかしくなった。
「さあな。お前って絶倫だし」
しれっと言ってやれば、陽介はさあっと青ざめた。少し間を置いてから、蘭はこう付け加えた。
「……でも、もういいんだよ、そんなこと。ヤってようがヤってなかろうが、どっちでもいい。俺たちの絆は、そんなことじゃ変わらないだろ?」
「蘭……」
陽介は、蘭をぎゅっと抱きしめた。
「ありがとう、そう言ってくれて。さあ、そろそろ寝ようか。君も今日は大変だったろう」
陽介は寝室の灯りを消そうとしたが、蘭は体を起こした。
「あ、俺はまだやることがあるから。お前は先に寝てて」
「もうこんな時間だぞ?」
陽介が眉をひそめて、時計を見る。確かに日付は、とっくに変わっている。
「沢木薫子の所から、盗聴器を回収してきたんだ。聴いてみないと」
明日にすればいいのに、とぼやく陽介を背後に、蘭は寝室を出た。自室に入り、鞄から盗聴器を取り出す。
――何か成果はあっただろうか……。
蘭は期待を胸に、再生ボタンを押した。
ともだちにシェアしよう!