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「……ん」  はっと目を開けると、寝室のベッドの上だった。あれから蘭と陽介は、浴室で何時間も交わり続けた。そのうち蘭は、ついに意識を飛ばしてしまったらしいのだ。気がつけば、きちんとパジャマを着せられていた。陽介が体を拭いて、着せてくれたのだろう。 「目が覚めたか? 何か飲むか」  タイミングを計ったように、陽介が寝室に入ってきた。 「うん、水をくれるか?」 「了解」  寝室に備え付けの冷蔵庫から、陽介がペットボトルを出し、グラスに注いでくれる。蘭は寝そべったまま、差し出されたグラスを受け取った。喘ぎすぎて嗄れた喉を、冷たい水が癒やしてくれる。 「体、大丈夫か?」  腰をさする陽介を、蘭はにらみつけた。 「心配するくらいなら、やりすぎんなよ」 「君が挑発したんだろうが。……それに、俺自身確かめたかったからな。あいつと寝たのかどうかを」  陽介は、ぽつりと言った。 「一回やっていたら、君と何回もできないと思うんだが。蘭はどう思う?」  そう尋ねる陽介の顔は大真面目で、蘭は何だかおかしくなった。 「さあな。お前って絶倫だし」  しれっと言ってやれば、陽介はさあっと青ざめた。少し間を置いてから、蘭はこう付け加えた。 「……でも、もういいんだよ、そんなこと。ヤってようがヤってなかろうが、どっちでもいい。俺たちの絆は、そんなことじゃ変わらないだろ?」 「蘭……」  陽介は、蘭をぎゅっと抱きしめた。 「ありがとう、そう言ってくれて。さあ、そろそろ寝ようか。君も今日は大変だったろう」  陽介は寝室の灯りを消そうとしたが、蘭は体を起こした。 「あ、俺はまだやることがあるから。お前は先に寝てて」 「もうこんな時間だぞ?」  陽介が眉をひそめて、時計を見る。確かに日付は、とっくに変わっている。 「沢木薫子の所から、盗聴器を回収してきたんだ。聴いてみないと」  明日にすればいいのに、とぼやく陽介を背後に、蘭は寝室を出た。自室に入り、鞄から盗聴器を取り出す。  ――何か成果はあっただろうか……。  蘭は期待を胸に、再生ボタンを押した。

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