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15 食うか食われるか
わずかに数時間ほどまどろんだ後、起き出した蘭は、そわそわとテレビを見つめた。今日は、陽介が緊急記者会見を開くのだ。稲本からもらった写真を見せて、写っている蘭こそが本当の妻だ、と発表する予定である。悠は、差し入れを持ってきた妻の友人であり、事務所の発表は、動揺した秘書が先走った、で通すそうだ。
『苦しい言い訳だがな。でも、蘭以外の人間が妻だと誤解されるなんて、耐えられないから……』
陽介は、そんな風に言っていた。
会見までは、まだ時間がある。蘭は、稲本に電話をかけた。献金ネタから降りたとはいっても、あれだけ関わらせた以上、沢木のことを話しておくべきだと考えたのだ。彼女が実の母親だった、と告げると、彼はたいそう驚いていたが、ふとこんなことを言い出した。
『……ああ、でもようやく腑に落ちたな。沢木と初めて会った時、関わったことがある気がするって言ったろ? 今から思えば、どこかお前に似てたんだ』
「おい、止めろよ」
蘭は、むっとした。
「どこが、俺に似てんだよ?」
『顔立ちとか、雰囲気とか。言われてみれば、だけどな。それから、たくましく生きてるところ』
稲本は、げらげら笑った。蘭はそれを無視して、献金のネタは追い続ける、と宣言した。
『本当に?』
稲本も陽介同様、困惑したようだったが、蘭が強硬に主張すると、それ以上何も言わなかった。
『――ああそれから、俺の方だけど。伊代さんのこと、前向きに考えてみようと思う』
「本当か?」
急な変化を、蘭は意外に思った。
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