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”
「陽介先生を、好きだからですよ」
悪びれもせず、悠が答える。陽介は、目をつり上げた。
「嘘をつくな! 君が好きなのは、父だろう」
「動画で言ったことなら、あれはヒートで、わけがわからなくなっていたから……」
悠はもごもごと言い訳を始めたが、陽介はそれをさえぎった。
「職業柄、嘘をついている人間は一目でわかる。君が本気で俺を好きとは、とうてい思えない……。まあ、その話はいい。問題は、どうして蘭にあそこまでひどい仕打ちをしたのか、ということだ。蘭は、君を親友と信じていたんだぞ。同じ施設で育った幼なじみじゃなかったのか?」
「幼なじみ……、ね」
悠はそこで、初めて蘭の方を見た。
「別にいいじゃないですか、あれくらいのこと。蘭は僕と違って、何でも持ってるんだから。小さい頃から、ずっとそうでしたよ。蘭は綺麗で、優秀で、職員の人たちからも好かれていて……。僕はね、施設にいた頃、蘭よりもいい家庭に引き取られるのが目標でした。しょぼい家との縁組みは全部蹴って、やっと金持ちの家の養子になったのに……。結局、家は事業に失敗するし!」
蘭は、あっけにとられて話を聞いていた。確かに悠も蘭同様、なかなか引き取ってくれる家庭が見つからなかった。結局、蘭より一年後に縁組みが決まったのだが、どうしてだろうと不思議に思っていたものだ。そんな理由で悠の方から断っていたとは、思いもしなかった。
「結局僕は、大学も中退して、その日暮らしの生活をするはめになりましたよ」
吐き捨てるように言った後、悠は蘭をじろりとにらんだ。
「それに引き換え蘭は、資産家の家の養子になって、一流大学から一流企業に入って。その上今度は、金持ちのお坊ちゃんの番になって、結婚ですよ? 許せないでしょ、そんなの。蘭から、何か一つくらい奪ってやったって、いいじゃないですか!」
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