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”
陽介の迫力にひるんだのか、悠はさすがに黙った。
「相沢。蘭はな、君を幼なじみの親友として、それは大切に思っていたんだ。君が結婚祝いにくれたレシピを、とても喜んでいた。大事に保管して、何度も読み返していた。そして、確かに蘭は最初、俺に色仕掛けで近づいた。だがそれは、俺の父に復讐するためだった。その復讐の中には、相沢、君のことも含まれていたんだぞ? 今回の計画だって、蘭は最後まで反対していた。……君から、あんな仕打ちを受けた後だというのにな」
「……」
悠は、黙り込んだ。蘭は、おそるおそる口を挟んだ。
「悠。悠にそんな風に思われていたなんて、ちっとも知らなかったよ。でもさ、俺は俺で、昔から悠のこと、羨ましかったよ?」
「羨ましい?」
悠が、眉をひそめる。
「うん。悠は家庭的で、器用で、気配りもできて、俺にないものをいっぱい持ってた。悠がいいアルファの人と結婚できたらなって、ずっと願ってたんだ」
再び、悠が沈黙する。陽介は、咳払いした。
「まあ、過去に君が父から受けた被害については、確かに気の毒だと思う。その点は、ちゃんと補償してやりたいと思っている。それから今回の件、個人情報がさらされたのは想定外だった。それについては謝る。君のことはかくまってやるし、これ以上情報が漏れないように、措置は取るから」
「……動画、消してください」
悠が、ぽつりとつぶやく。陽介は、うなずいた。
「それは、相沢、君次第だ。俺の要求をのめば、動画は消去し、この先も残らないように、対策してやる」
「僕は、何をすればいいんです?」
悠が、必死の眼差しでうったえる。だが、陽介が告げた内容に、彼は固まった。
「そんなことは……」
「できないか? なら、動画はずっとそのままだな」
悠が、三たび沈黙する。しばらくして彼は、ついに首を縦に振った。
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