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「ではあなたは、勲先生という相手がいながら、息子の陽介先生と結婚なさったと?」 「自分たちの関係を続けるにはそうするしかない、と勲先生に説き伏せられたんです。動画で言っている『作戦』とは、そのことです。僕が愛しているのは、勲先生です」  悠は、陽介の台本どおりに喋っている。切れる奴だ、と蘭は改めて陽介に感心した。勲が動画内で言っていた身代わり妻作戦を、上手くすり替えた。これで、全てのつじつまが合うではないか……。 「僕と陽介先生は、形だけの夫婦なんです。陽介先生は、番の男性一筋です。僕には、指一本触れたことはありません。もちろん、番にもしていません」  悠は、無傷のうなじをさらした。インタビュアーは、すごい勢いでメモを取っている。これは大きな特ダネをつかんだ、とでも思っているのだろう。 「僕は、結婚指輪すらいただいていないんです。これは、ネットでも指摘されましたが……。陽介先生と対の指輪を持っているのは、彼です」  悠が、再び蘭を指さす。陽介と蘭は、そろって結婚指輪を披露した。インタビュアーは、うなずくと、陽介の方へ向き直った。 「せっかくですから、陽介先生にもお話をおうかがいしましょう。今のお話は、事実ですか?」 「はい、そのとおりです」  陽介が答える。 「自分には、立場がある。スキャンダルはまずい、独身のお前なら誤魔化しがきくから、と父に頼まれました」 「しかし、結婚なんて人生の一大事ですよ? いくらお父様のご命令とはいえ、承知されたんですか?」  インタビュアーが、不審そうな顔をする。陽介は、きっぱりと告げた。 「近々選挙があるから、取りあえずそれまで頼むと言われ、やむなく引き受けたんです。父はこう言いました。オメガなんて使い捨てだ、選挙さえ終われば別れたらいい、と」

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