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 インタビュアーが、絶句する。さらに、と陽介は言った。 「父は、僕を脅迫したんです。命令どおりに結婚しなければ、僕の番の実家をつぶすと……」  そう言って陽介は、おもむろにボイスレコーダーを取り出した。再生されたのは、勲の声だった。 『お前は、私の言うとおりにしていればいいんだ。わかったな? ピーッ、なんぞ、私の手にかかれば、すぐに倒産に追い込めるんだぞ……』  蘭は、あっと思った。陽介が会見を開く前に、勲が圧力をかけた時のものだ。消された部分は、『M&Rシステムズ』と言っているのだろう。  ――録音し、逆に利用したか……。 「では、全ては白柳勲幹事長の差し金だった、と。お二人は、彼に利用されてしまった、ということですね?」  インタビュアーは、深刻な表情を浮かべた。 「そうなんです。僕たちは最初から、父の駒でしかありませんでした。テレビで結婚発言をしたのも、インパクトを与え、僕たちの結婚に信憑性を持たせるためです」  陽介は、しれっとそんな嘘を吐いた。 「ところがどういうわけか、父と彼との密会動画が流出してしまいました。このままでは、彼が不倫の汚名を着せられてしまいます。おまけに、個人情報までさらされてしまい、これは放っておけないと判断しました。そこで思い切って、真実を暴露することにしたんです」  陽介は、堂々と語っている。蘭は、感嘆していた。あえて悠の動画をばらまいた理由は、これだったのか。悠を追い込み、消してくれと彼が泣きついてくるのを、想定していたのだろう。そして削除と引き換えに、このインタビューを受けさせる。蘭こそが真のパートナーであると発表できる上、勲を追い詰められる……。 「でも、父に利用されたのは、僕たち二人だけではないんです」  陽介は、さらに続けた。 「こちらの五人の方々もそうです。皆さん、父の元愛人です」

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