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その後、二種類の週刊誌は、同時発売された。その反響は、すさまじかった。選挙の責任者でもある与党幹事長の、色と金という二大スキャンダルである。世論調査では、与党の支持率は急落した。
与党内では、勲だけでなく陽介への批判も上がった。選挙直前にあんなことを暴露するなんて、身内の足を引っ張る気か、と候補者らは騒ぎ立てた。だがそんな声は、すぐに止んだ。というのは、陽介本人の好感度が上昇したからである。候補者たちは、こぞって彼に応援を依頼した。陽介はそれに快く応えて、全国各地を飛び回った。
『好感度アップは単なる同情だろうが、この際何でもいい。俺自身は必勝圏内だから、一人でも多くの仲間を勝利に導くぞ……』
陽介は、そんな風に言っていた。
蘭と悠は、相変わらず息をひそめて生活していた。幸い食品などの必需品は買いだめしていたので、外出しなくて済む。悠は家事一切を受け持ってくれたので、蘭は海の世話に集中した。
「久々に、こってりした物が食べたいなあ」
ある晩悠は、そんなことを言い出した。
「よく考えたら、この家にある食材って、野菜ばっかじゃん」
「そりゃ、悠のレシピが野菜料理ばっかりだったから、そうなったんだよ」
そう答えると悠は、あきれ顔をした。
「何、今までずっと僕のレシピ頼みだったわけ?」
「応用する自信がなかった」
蘭は、正直に白状した。
「しょうがないなあ、もう……。あ、でもトンカツならできそうだな。よし、今晩はそれにしよう」
悠は、冷蔵庫や貯蔵庫をチェックしながらうなずいた。
「ん、でも卵がないのか」
「無理に作らなくても、デリバリーすりゃいいじゃん」
蘭は面倒になってきたが、悠は作ると言い張った。
「これを機に、蘭も作れるようになりなよ……。僕、コンビニで卵買ってくるからさ」
「え、外出は止せよ」
蘭は、眉をひそめた。
「大丈夫だって。マンションの中の店に行くだけだから」
確かにコンビニは、一階にあるのだ。それならいいかな、と蘭は彼を行かせることにした。
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