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”
――遅いな、悠のやつ。
蘭は、時計を見上げた。コンビニへ行くと言って出ていって、もう三十分になるのだ。いくら吟味しているといっても、同じマンション内の店だというのに。
不安になり、蘭は悠に電話をかけた。そのとたん、着信音がキッチンから聞こえてきた。
――スマホ、置いてったのかよ。
蘭はため息をつくと、様子を見に出かけた。コンビニに入り、店内を探して回る。だが、悠の姿はどこにもなかった。ついでに海のおむつを買いながら、蘭は店員に尋ねてみた。
「ついさっき、オメガ男性が来ませんでしたか? 二十代後半くらいで……」
蘭は、悠の特徴を並べ立てた。すると、確かにいたが、出ていったところだと言う。
――入れ違いに、部屋へ帰ったかな……?
しかし、何だか胸騒ぎがする。蘭は、生鮮品のコーナーをのぞいてみた。卵が売り切れている。
――まさか、卵を求めて外へ出た……?
蘭は、あわててマンションの外へ出た。一番近いコンビニへと向かう。すると、まさに悠が店から出てきたところだった。声をかけようとして、蘭ははっとした。
近くの路地に駐まっていた車から、二人組の男が出てきたのだ。彼らは、悠に近づくと、あっという間に取り囲んだ。そして、車内へと連れ込もうとするではないか。
「悠!」
蘭は絶叫した。しまった、という顔をして、男たちが顔を見合わせる。一人が悠から離れ、蘭の方へと向かってきた。
「悪く思うなよ。誰かに見られたらそいつも消せ、って言われてるからな」
男の手には、ナイフが握られていた。
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