191 / 257
”
「本当に、ゴメンね」
悠が、申し訳なさそうに頭を下げる。もういいよ、と蘭は言った。むしろ、わだかまりが解けて、何だかすっきりした気分だ。
「結局、何もなかったんだし……。それにこっちだって、お前の動画を流した。もうチャラにしようぜ」
「いいの?」
悠が、パッと顔を輝かせる。
「ああ。……でも、一つ確認。お前、陽介の体をあちこち弄ったって言ったよな?」
悠の笑みは、固まった。
「それは、まあ……、はい。あの、蘭、やっぱり怒ってる?」
「まあな」
蘭は、重々しくうなずいた。
「ええと……、どうすれば、許してもらえる?」
「そうだなあ」
少し間を持たせてから、蘭はにっこり笑った。
「俺に、トンカツの作り方を教えろ」
「は? それだけでいいの?」
悠は、拍子抜けしたような顔をした。
「ああ、それで帳消しにしてやる。……あ、でも卵は、結局どうなったんだっけ?」
「それなら無事だよ!」
悠が、得意げに卵のパックを取り出す。あれだけの騒ぎの中でも、死守したらしい。卵にはヒビ一つ入っていなくて、蘭は驚くより呆れた。
「お前って……。まあいいや、早速作るか」
「うん!」
二人して、準備を始める。子供の頃を思い出して、蘭は何だか楽しくなってきた。下処理していると、陽介から電話がかかってきた。
ともだちにシェアしよう!