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『相沢を襲った男たちが、逮捕されたぞ』 「もう?」  展開の速さに、蘭は驚いた。 『警察関係の知人に動いてもらって、銃刀法違反で現行犯逮捕だ。だが、固く口止めされているようで、父との関連は吐かない。だから俺の方で、父に揺さぶりをかけておいた。あなたの雇った刺客だとわかっていますよ、と。当面は、同じ真似はしないだろう』  蘭は、ほっと胸を撫で下ろした。 『とはいえ、くれぐれも油断するなよ? 相沢には、きつく言っておけ』 「了解」 『ん? 何だか、やけに楽しそうだな』  陽介は、蘭の声音の明るさに気づいたようだった。 「ああ。今、悠とトンカツ作りしてるんだよね。あ、ところでお前、不能疑惑が出てるぞ」 『はあ!?』  陽介が、すっとんきょうな声を上げる。蘭は手短に、悠から聞いた話を伝えた。 『よかった……』  陽介は、心底安堵したようだった。 『ごめんな、蘭。今まで不安にさせて。俺が自信を持って、潔白だと言い切れればよかったんだが……』 「いいって。結果的に、シロだったんだし。あ、ちなみにお前が不能じゃないってのは、俺が誰よりもよく知ってるから、安心しろ」  横で聞いていた悠が、ぷっと吹き出す。 『当たり前だろう……。今はそれどころじゃないが、選挙が終わったら抱きつぶしてやるから、覚悟していろよ』  陽介が、低く笑う。 「望むところだ。じゃああと少し、気合い入れていけよな」  ありがとう、と告げて陽介は電話を切った。蘭は、心の中で祈った。  ――俺たちが勲を告発したせいで、他の候補者たちは苦戦している。勝手なのはわかっているけど、陽介が無事当選できますように……。  そして、投票日が訪れた。

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