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”
勲は、あっという間に悠の服を剥ぎ取っていく。悠は、されるがままだった。ヒートのせいか、それとも、勲が好きだからだろうか。その時、裸にされた悠が、勲の首に腕を回した。蘭は思わず、二人の顔に焦点を合わせた。悠は、とろんとした顔で、うわごとのようにつぶやいた。
「――勲先生……、好きです……」
ドキリとした。すると勲が、からかうように言った。
「でたらめを言うな、この淫売が。私の作戦に乗ったのは、陽介を好きだからだろう?」
「違う!」
悠は、激しくかぶりを振った。
「僕が好きなのは、勲先生だけ……。もう、昔からずっと……」
自らも衣服を脱ぎ捨てた勲が、悠を貫く。ろくに慣らしもしていなかったから、きっと痛いはずだ。それでも悠は、幸せそうな笑みを浮かべて勲に抱きついていた。こらえきれず蘭は、そっと目をそらしたのだった。
約一時間後。散々悠の体を貪った勲は、ようやく身を起こした。蘭は素早く、陽介に合図のメッセ―ジを送った。程なくして、勲のスマホが鳴る。陽介が仕組んだ、偽の呼び出しである。
勲はスマホを確認すると、衣服を身に着け、満足そうに部屋を出ていった。しばらくして蘭は、そっとクローゼットから出た。悠はぐったりと横たわり、ぴくりともしない。発情誘発剤は、眠気の副作用があるのだ。アルファと交わった疲労も加わって、悠はぐっすり眠っている様子だった。
――悠、ごめん。
心の中でもう一度悠に謝罪すると、蘭は彼に布団をかけてやった。そのまま、部屋を出る。向かう先は、ホテル近隣の駐車場だ。
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