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”
「悪い意味じゃないぞ?」
陽介は、大真面目な表情だ。冗談を言っている様子はない。
「今回、たくさんの仲間が落選した。稲本に言われるまでもなく、週刊誌の取材を受ける時点で、それは予想していた。それでもあえてインタビューに踏み切ったのは、君を守るためだ。……それに実のところ、俺は、こうして下野しても構わないと思っていた」
「――ええ!?」
蘭は、ぎょっとして陽介の顔を見た。
「仲間たちに悪いとは思ったが、一度野党になって出直すのもありかな、と思ったんだよ。うちの党は、これまで父の影響を受けすぎていた。選挙に負ければ、責任者である父の権威は失墜する。荒療治だが、長い目で見て、その方がうちの党のためになると考えたんだ」
まさか陽介が、そこまでの覚悟だったとは思わなかった。
「……でも」
陽介は、そっと蘭の手を握った。
「俺一人では、きっとそんな決断はできなかったと思う。……蘭、君が勇気をくれたんだよ。君が体を張って、俺の元に飛び込んできて、父を打倒したいと言った。君がいてくれたから、俺はここまでやり抜けたんだ。今日会見で言ったことは、全て俺の本音だ」
「陽介……」
「だから、楊貴妃に例えた。君は美しく魅力的で、俺を夢中にさせ、クーデターのきっかけとなった。そして今、国は政権交代で、大きく変わろうとしている。……ただ、君と楊貴妃が違う点が、一つある」
陽介は、にっこりした。
「それは、この国は唐と違い、衰退はしない、ということだ。俺と君とで、いい国を作っていこう」
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