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伊代の葬儀は、少人数でひっそりと行われた。喪主は、入籍こそしなかったものの番ということで、稲本が務めた。他に参列したのは、遠縁の親戚と古い友人数名、そして蘭だ。陽介は、告別式のみの参加である。彼は通夜にも参列したがっていたが、さすがに選挙翌日ということで、当選報告会等の予定が詰まっていたのだ。
いよいよ、出棺の時が訪れた。蘭は海に話しかけた。
「ほら、お母さんに最後の挨拶をして」
「う~」
何もわからない海は、にこにこ笑っている。蘭は、込み上げる涙をこらえて、海に花を持たせた。補助してやりながら、伊代の顔の周りを飾る。
――海のことは、責任を持って育てますから……。
全員が花を納め終わると、棺の蓋が閉められた。
「悪いが、俺はこれで失礼する」
スケジュールの立て込んでいる陽介が、小声で囁く。蘭は、小さくうなずいた。参列者のほとんどは葬儀場で待機するが、蘭は稲本と共に、火葬場まで同行するつもりだった。
棺が、霊柩車に運び込まれていく。乗り込む準備をしていた蘭だったが、ふと気づいた。葬儀場から少し離れた所に、喪服をまとった一人の男がたたずんでいるのだ。蘭は、目を疑った。――それは、勲だった。
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