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”
「お前……、何でここに……」
「とにかく車へ戻れ。今突撃したって、中には入らせてもらえない」
仕方なく蘭は、陽介に従った。陽介は、運転席に乗り込むと、即座に車を発進させた。
「相沢の奴が、提出すべき書類を間違って家に持って帰ってしまっていてな。それで、すぐ事務所へ持ってこいと、電話した。そうしたら、蘭から海を預かったので難しいと言われた。海を預けてまで君はどこへ行ったんだろう、と不安になった。昨日から、様子もおかしかったし……。そこへ、沢木薫子の元に家宅捜索が入るという情報が入ってきた。それでもしや、『オメガの会』へ行ったのではと思ったんだ。案の定だった」
陽介は、蘭が単に沢木を案じて駆けつけたと解釈しているようだ。取りあえずはそう思わせた方が都合がいいが、果たしてこの後、彼女と話す機会はあるのだろうか。
「逮捕、されるだろうか?」
おそらくは、と陽介はうなずいた。
「内部告発があったんだ。これまでの会員に対する詐欺と、父へのヤミ献金についてのな。ちなみにたれ込んだのは、男性理事の一人らしい。沢木に言いより、相手にされなかったのを逆恨みしたようだ」
「……」
「そういえば、彼女から連絡はあったのか? 母親だと打ち明けたがっていたじゃないか。選挙は終わったわけだが」
思い出したように、陽介が言い出す。蘭はドキリとした。
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