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 蘭は、血の気が引くのを感じた。スマホで検索しようとしていた矢先、家宅捜索が入るのが見えたので、あわてて車から飛び出した。その際、車内に落としたのだろう。うかつだった……。 「君の様子がおかしかったのは、このせいか? この検索ワード……。まさか、俺たちは異母兄弟なのか? 君は、沢木さんと俺の父との子なのか?」 「……」 「蘭。答えろ」  陽介が、ずいと近づく。蘭は、観念した。 「わからない。でも、その可能性が高い」  目を伏せて、告げる。陽介の顔が見られなかった。彼は、どう思っただろう。兄弟で交わり、番になったことを。そして、子供まで宿したことを……。  ――汚らわしい、そう思うだろうか。子供は、堕ろせというだろうか。お願いだ、産ませてくれ。腹の子に、罪はないんだから……。 「かわいそうに。それで、一人で悩んでいたのか」  意外にも優しい声音に、蘭は、はっと顔を上げた。すると陽介は、慈愛に満ちた眼差しで蘭を見つめていた。 「俺が触れようとすると拒んだのは、そのせいだな? 気づいてやれなくて、悪かった」 「陽介……」  蘭は、信じられない思いだった。 「あまり悩むと、お腹の子に悪いぞ? 食事の支度も無理しなくていいから、早く休むといい」  陽介は、けろりと言う。あまりにもいつもどおりな彼の様子に、蘭はあっけにとられた。 「お前……。どうしてそう、普通なんだよ? まだ沢木本人に確かめたわけじゃないけど、確率は高いんだぞ? 本当に兄弟だったら、どうするんだよ、俺たち。それに、この子供……」 「どうもしない」  陽介は、間髪を容れず言い切った。 「たとえ血がつながっていても、俺たちの関係は何も変わらない。俺は、君を変わりなく愛するし、産まれた子も愛する」

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