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 陽介は、蘭のそばにひざまずいた。 「セックスだけが、夫夫(ふうふ)のつながりじゃないだろう。心が結びついていたら、それでいいんだよ」  陽介は、そっと蘭の頬を撫でた。 「殴って悪かった。でももう二度と、別れるなんて言わないでくれ。一人で抱え込むのも、なしだ」 「……ごめん。はっきりするまでは、お前に言うべきじゃないと思ってたんだ。今日『オメガの会』に行ったのは、沢木に確認するため。彼女、急に俺を避け始めたから、あそこで張り込むしかなくて……」 「逮捕されるのを、予感したからじゃないかな。母親として名乗り出る勇気が、なくなったんだろう」  陽介は、優しく言った。それならいいが、と蘭は思った。 「バレた以上は、お前にも見せるよ。実は、手紙が来て……」  蘭は、自室へ行くと、同級生からの手紙を持ってきた。陽介は、真剣な表情で目を通すと、うなずいた。 「事情は了解した。この同級生はこう言っているが、彼女の推測が当たっているとは限らないだろう。とはいえ、蘭をこれ以上不安にさせないためにも、真偽のほどは俺が確かめる」 「どうやって?」  蘭は、眉をひそめた。 「逮捕されたら、沢木とはなかなか話す機会がないんじゃ? それに、勲先生に聞いてもわからないと思う。おそらく彼女は、勲先生に内緒で出産しているはずだから」 「それなら、DNA鑑定を使おう」  陽介は、あっさりと提案した。 「それで、君と父に親子関係があるかどうかがはっきりするはずだ……。構わないか?」  うん、と蘭は力強くうなずいた。

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