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 蘭は、ドキリとした。 「別に……。お前と腹違いじゃないってわかったんだから、もういいよ。父親が誰であろうが、俺には関係ない」 「本当か?」  陽介が、再度尋ねる。蘭は、眉をひそめた。 「本当だって。あの日沢木に会いに行ったのは、相手が勲先生かどうかの確認だけだ。そうじゃないってわかったんだから、それ以上知る必要はない。俺の両親は、市川の二人だから」 「そうかな」  陽介は、妙にしつこかった。 「心底そう思っているのなら、どうして手紙を開封した? 稲本は、父親の情報だと言って渡したんだろう? 読まないで処分することも、できたはずだ。やっぱり、知りたいんだろう? 実の父親のこと」 「……」  蘭は、ぐっとつまった。すると陽介は、不意に立ち上がると、寝室を出て行った。やがて戻ってきた彼は、バッジを手にしていた。蘭は、おやと思った。それは、いつも着用している、赤紫の議員バッジではなかったのだ。金色のバッジだ。まさか……。 「君の夫は、弁護士でもあると覚えていたか?」  陽介が微笑む。 「俺はこの度、沢木薫子さんの弁護を受任した」

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