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「――いつの間に!?」
蘭と陽介は、あぜんとした。陽介の友人でもある新秘書と付き合っているのは、知っていたが……。ひとまずは、おめでとうと告げる。悠は、嬉々としてうなずいた。
「ありがとう! 蘭、先輩ママとして、いろいろ教えてよね。それからこれ、僕たちからのお祝い」
悠は、ベビーギフトらしき箱を見せた。それで思い出したのか、陽介も似たような箱を出してきた。
「そうそう、古城さんからも預かっていたんだ。ちなみに、見舞いは遠慮すると言っていた。前に海をあやそうとして、全然なつかれなかったのがトラウマらしい」
陽介が苦笑する。そういえばそんなこともあったな、と蘭は思い出した。
「ありがとう……。退院したら、皆にお返しをしないとな。悠、取りあえず旦那さんに、ありがとうございますって伝えておいてくれるか? それから、ご結婚おめでとうって」
「了解!」
元気よく返事をして、悠が帰って行く。陽介は、肩をすくめた。
「相沢のことだ。計画的な妊娠だろうな」
「かもね。でもいいんじゃない? 幸せならさ」
まあな、とうなずいた後、陽介は顔をくもらせた。
「……ところで、沢木さん、来ないな」
沢木は先日、懲役一年、執行猶予二年の判決を言い渡された。検察は控訴を断念、判決は確定した。実刑を免れたのは、陽介の絶妙な弁護と、沢木自身の真摯な反省の態度のおかげである。しかし、もう自由に行動してよいはずなのに、彼女からは祝いの手紙と贈り物が寄せられただけだった。
「やっぱり、遠慮してるのかな」
だろうな、と陽介は深刻にうなずいた。
「退院したら、彼女の自宅を訪問しようか。海と双子を連れて」
「そうだね! それから、父さんの墓にも。一気に家族が増えて、びっくりするぞ」
蘭は、顔を輝かせた。出産前は、陽介と二人だけで墓参りをしたのである。
「よう、市川」
そこへ、稲本が顔をのぞかせた。
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