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「ノウハウ? そりゃ、お安いご用だけど……。でも、どうして? ……まあいい。後でな」
けげんそうな顔をしたものの、急いでいたのだろう。稲本は、慌ただしく出て行った。陽介が、眉をひそめる。
「蘭、もしかして仕事に復帰する気か?」
うん、と蘭はうなずいた。
「俺、記者の仕事に戻りたいと思ってるんだ」
「いや、しかし……。出産したばかりだろう。おまけに、双子だ。いくら俺が手伝うといったって、海の世話だってある。無理はするな」
「でも、前から決めてたんだ。出産したら、仕事に復帰しようって。勲先生への、返済もあるし……。実はもう、保育園は探してある」
「ああ、もう……。言い出したら聞かないんだから」
陽介は、あきれたようにため息をついた。蘭は、そんな彼を見つめて、静かに告げた。
「それに。早速、追いたいネタがあるんだ。……。俺の実の父親の、死の真相だ」
陽介は、息をのんだ。
「蘭。気持ちはわかるが、止めておけ。それは危険だ。父親と同じ目に遭ったら、どうする?」
「いや、これは譲らないぞ」
蘭は、激しくかぶりを振った。
「俺の魂は、やっぱり記者なんだ。真相を解明し、事実を世に公表することが、俺の天命だ」
陽介は、しばらく思案していたが、やがて決意したようにうなずいた。
「……仕方ないな。それなら、応援しよう。……俺が惚れたのは、蘭の、そういう大胆で、勇敢で、そして正義感にあふれたところなんだから……。安心しろ。俺はずっとそばにいて、君を守ってやる」
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