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「来年の今頃は、きっとにぎやかになるわよ。一気に孫がたくさんできて」
養母は、心底喜んでいる様子だ。蘭は、胸が熱くなった。なんだかんだ言いながらも、養父母は自分を、実子と分け隔てなく扱ってくれている。彼らはやはり、蘭の家族なのだ。
――やっぱり、言わなくて正解だった。実の親について尋ねに行ったことは、この先も内緒にしておこう……。
「私たちは、幸せだわ」
養母が、しみじみと言う。
「息子は立派に育って、孫もできて。そしてお婿さんは、世間でも有名な愛妻家」
え、と蘭は思った。何やら養母の口調に、意味深なものを感じたのだ。きょとんとする蘭を見て、彼女はくすりと笑った。
「もしかして、蘭、見てないの? 陽介先生のSNS」
「――あいつ、何かしたの!?」
養母が差し出したスマホを、蘭はひったくった。白柳陽介事務所が、SNSを更新している。投稿の日付は、今日だった。
『白柳の今日の昼食は、愛妻弁当です。事務所にお客さんが来るたびに自慢する、デレデレぶり。この幸せパワーで、議員活動もバリバリこなすことでしょう』
でかでかと掲載されているのは、まぎれもなく、今朝蘭が渡した弁当だった。投稿したのは、悠だろうか。いずれにしても……。
「陽介のやつ、帰ったらしめてやる」
蘭は、歯ぎしりしたのだった。
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