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番外編:白柳明希のゆううつ・その4

 わたしはその夜、なかなか眠れなかった。パパと海お兄ちゃんの様子は、何だか変だった。気になって仕方なかったのだ……。  落ち着かないわたしは、キッチンに水を飲みに行こうとした。すると、パパとママの寝室から、何やら言い争う声が聞こえてきた。わたしは、そっと耳をそばだてた。 「明らかに、妹以上の感情を持っている。このまま二人を、一つ屋根の下にいさせるのはまずい」  パパの声だった。海お兄ちゃんとわたしのことだろうか。すると、ママが言った。 「本当のことを、話すべきかな? 望大も、勘づいていることだし……」 「でも、いずれにしても血が繋がっていることに変わりはない。海を苦しめるだけだ」 「血縁関係なんか蹴散らかすって言ったのは、どこの誰だよ」 「茶化すな。とにかく、早く海を家から出すことだ……」    一体、どういうことだろう。わたしの頭は、疑問でいっぱいだった。海お兄ちゃんは、わたしのお兄ちゃんじゃないのか。でも、血が繋がっているとも言っていた……。  そこでわたしは、望大お兄ちゃんに相談することにした。何かに気づいているらしいし、ママと同じ記者を目指すだけあって、彼はとっても好奇心旺盛なのだ。 「あの人たち、どうして聞こえるような状況で話すかなあ」  聞いたことを打ち明けると、望大お兄ちゃんはあきれた顔をした。 「お兄ちゃんは、どう思う?」 「うん。実は俺、海兄さんは父さんと母さんの子じゃないんじゃないかって思ってた」 「ええ!? そうなの? どうして?」  わたしは、思わず身を乗り出した。 「前に、父さんのばあちゃんが、父さんたちに旅行をプレゼントしたことがあっただろ」 「結婚十周年記念の時だよね」  そう、とお兄ちゃんはうなずいた。 「その時、ばあちゃん、ぽろっと言ってた。山陰は、二人が出会った思い出の土地だもんね、って。そこで俺、父さんたちに突っ込んで聞いたんだ。二人の出会いのこと。そうしたら、父さんの講演会に、母さんが取材で訪れて、それで知り合ったんだって。だけど、何だか二人とも、あまり語りたくなさそうだった。おかしいと思わないか? 隠すような内容じゃないだろう」 「確かにそうだよね」 「それで俺、調べてみた。父さんの当時の活動内容。そうしたら、海兄さんが生まれるより前に、父さんが山陰で講演した実績はなかったんだ」

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