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第2話

「先輩。ごはん作ってきたよ。お花見しながら一緒に食べよ」  告白から二日後のお昼前。カナトは風呂敷包みを抱えて、食堂へ向かうアキラを見つけ出し、引き止めた。  すでに桜はほぼ散り、青々とした緑がほとんどになっていた。  アキラはカナトに引きずられるようにして、構内の桜の木の下に連行された。 「たくさんあるからたくさん食べてね」  カナトが持ってきたビニールシートの上に広げられたのは、和洋折衷の重箱セットが二つ。まるで運動会のお弁当だ。 「まさか、お前が作ったのか」 「まさかとか失礼すぎでしょ。当たり前じゃん。他に誰が作んの。はい」  カナトは適当に見繕い、紙皿にのせてアキラに手渡す。  綺麗に並べられたおかずは彩りもバリエーションも豊富で、食欲を刺激する。  アキラは紙皿の唐揚げに箸を伸ばし、口に運ぶ。 「頂きます……。……ん? うん! おいしいよ、カナト」  外はさっくり、中はジューシー。よく味の染みた唐揚げは手間と時間をかけて作られたものなのだろう。  カナトの見た目からは全く想像できないが、かなりの腕前だ。  食欲の求めるまま、箸が止まらないアキラをカナトは楽しそうに眺める。 「花より団子だねぇ。先輩は何が好きなの? 」 「ん、好きなものか? そうだな……だし巻き卵が好きだな」 「そっか。いーよ、今度作ってきてあげる」 「楽しみにしとくよ」  この一件以降、カナトはアキラにごはんを振る舞うことが増えていった。  カナトは柔らかい眼差しでアキラを見つめることが日課になった。 「俺の料理をたくさん食べてくれる先輩のこと大好き」 「俺もいつもおいしい料理を作ってくれるカナトが好きだよ」  そう言うとカナトは顔を真っ赤に染めながら微笑んだ。  いつもの、声を出して笑うカナトとは違う、はにかんだような控えめな微笑みにアキラは胸が高鳴るのを感じた。 ーー可愛い。とても愛おしい。  新婚生活のような時間と気持ちを二人はお互いに共有していた。  故に二人が深い仲になるまでそう時間はかからなかった。

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