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第4話

「……何でそんな事すんの? 」  カナトが不機嫌な低い声を出す。 「先輩は俺のでしょ? 先輩が触ってもいいのは俺だけだよね? 」 「カナト、俺は……」 「だからお仕置きだよ、俺が許すまでこのまま」 「見ていたならわかるだろう、あれは不可抗力だ」  冷静に話そうとするが、カナトの怒りは収まらない。むしろ火に油を注いでしまったようだ。 「は? 言い訳するの? 」  眉間に皺を寄せて、カナトは不快感を示す。 「アンタは俺だけを見て、俺のことだけを考えてればいいんだよ。ね、俺だけを愛して、先輩」  ーー確かに退屈しないな、お前は。本当に楽しませてくれるよ。  さて、下手な言い訳は逆効果。  こういう時の対処法はたった一つ。  カナトには効果絶大だ。 「カナト、不安にさせてごめんな。俺が悪かったよ」  しおらしく、椅子に座るカナトを見上げる。 「先輩」 「俺が軽率だったよ。お前の気持ちを考えもせずに」 「……うん」  カナトの瞳が揺れる。アキラが分かってくれた喜びと許せないという怒りがせめぎ合っている。 「コレ、外してくれるか? お前のこと、抱きしめたい」  アキラが優しく言うと、頬を染めたカナトはしゃがみ込み、無言で手首の手錠を外す。  アキラは数度手首を動かして感触を確かめた後、カナトを包み込むように抱きしめた。右手でカナトの髪を優しく撫でる。 「ごめんな」 もう一度言うと、カナトは小さくため息をつく。 「もーいいよ。……ね、仲直りのキスしたい」  カナトの瞳にはすでに怒りの色はなく、これから先の期待と情欲が混じり合っていた。  アキラはカナトの唇に自分の唇を合わせる。舌先で唇をつつくと、ゆっくりと唇が開かれる。  舌と舌が触れ合えば、濡れた音が室内にあふれ出す。  カナトはとても快楽に弱い。  怒りに染まった頭も快楽で蕩けさせれば、もう何も考えられなくなって、もっともっととさらなる快楽を求めるようになるのだ。  いつもは涼しげな、凛とした切長の瞳が熱でどろりと溶ける瞬間がアキラはとても好きだった。 ーーまさか睡眠薬を盛って、手錠まで持ち出すとはな。  やられっぱなしは性に合わない。少し躾が必要だ。   深い口付けを落としながら、アキラは思考を巡らせる。

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