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第4話

「ぅうっ…っ!」 ガバっと上半身を起こすと、そこは見慣れた自分の部屋。 目の前には心配そうに覗き込む両親の顔が見えた。 「宵っ!大丈夫?どこかおかしい所はない?」 母の手が俺の顔から体をさすり、無事だとわかると安心したのか涙を流して抱きしめられた。 父がほっとしたように側にいた医者に礼を言い、頭を下げるのが見えた。 医者が一通りの診察をして大丈夫と太鼓判を押して帰宅すると、父の怒鳴り声が屋敷中に鳴り響いた。 「馬鹿者がぁっ!!!あんな所に行くなど、なんと馬鹿な事を!しかもよその子を道連れにするとは…。何事もなかったからいいようなものを…。」 「あなた、あちらの子が宵を道連れにしたんですよ!そうじゃなければ宵があんな所に行くはずがありませんもの!」 母のあちらの子と言うのが夕の事だとわかり、俺はその言葉に異を唱えた。 「夕は俺を止めたんだ!俺が嫌がる夕を無理矢理引っ張って、あそこまで連れて行ったんだ。それで夕もあいつに…。」 母が嘘だという風に首を振るが、父は俺の最後の言葉にすぐさま反応した。 「あいつ…だと?お前、まさか魔人様に会ったのか?!」 父の青ざめた顔に母がきょとんとした顔で返す。 「魔人様って、もう皆さま何百年も前に天に昇っていらっしゃるのだから、いるわけがありませんのに。」 そんな母の言葉に父が黙っていろと今まで見たことのないような形相で怒鳴りつけた。 「お前は部屋から出ていろ!」 そう言って嫌がる母の手を引っ張ると部屋の外に出し、扉を閉めて鍵をかけた。 ゆっくりと戻ってくる父を黙って見つめていると、近付いた途端にバシンと平手打ちを食らった。 「どうして叩かれたのか理解しているな?お前はもうこの家とは関係のない者として生きていってもらう。ただし、その住居と生活に必要なものはこの先もこちらで全て用意する。それで、何をされた?」 熱くひりひりとする頬をさすりそうになる手をぐっと我慢していた俺は、かけられた呪いと夕の事を全て話した。そして、最後の魔人の話も。 「そうか、魔人様は消滅されたか。しかし、破る法もない永遠の命とは…しかもその相手とは死に別れを繰り返す…別れたくても別れる事の叶わぬ愛と言う縛り。」 はあと大きなため息と共にぐしゃっと大きな手が俺の頭を掴んだ。 「お前はこれから夕と何度も死に別れを繰り返し、その苦しさや辛さを永遠に受け続ける身となった。私は親として、父としてお前を守ってやりたいが、それも叶わぬ。それでも宵、お前を見守れるようにこの身をこの地に縛り付けよう。見えぬ、聞こえぬ、語れぬとしても、お前を見守る存在がある事を忘れるな…まずはこの世界にお前達の居場所を作り、守ろう。父として出来得る全ての事をお前にしてやる。だが、この家に帰る事もしてはならぬ。この家の者である事も言ってはならぬ。お前はもう呪われた者。その身に呪いを受けた者をこの家に置くわけにはいかないんだ。分かってくれ。」 そう言って苦しそうに微笑む父の顔が今でも忘れられない。 父はその言葉通り、俺と夕を森の中の一軒家に住まわせ、我が家の守るべきものとして俺達の世話をするようにと書き記すと、その命が天に昇る直前に自らの手によって命を散らした。 この地に留まり、俺達を見守り続ける事を選んだ父は永遠に天に昇れぬ魂となった。

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