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第6話
そうやって何回、いや何十回、何百回と出会いと別れを繰り返していれば、たまには喧嘩したままで別れる事もある。
そんな時には、夕が俺の前に現れるのがいつもより遅くなったりした。
「だってやっぱりさ、会いにくいじゃない?」
そう言う夕は、この世界に産まれ俺のところに来るまでの間に、さまざまな人々と出会い色々な思い出を作れる。そして天にもいるであろう夕と関係する人々やその他の諸々の者達との思い出などがあるだろうが、俺には夕としかもうここ数百年出会いも思い出もなかった。
夕も俺も互いに会うことのできない同じ数年の我慢でも、その間も話、笑い合える者達がいる夕と誰もいない俺とでは全く状況が違う。
俺達の為に命を絶った父は、俺と夕を守る為に俺達の事を神のような存在として書き残した。そして下手に人と会い面倒事にならぬようにと考え、家に続く森の入り口に行き止まりのように祠を作り、そこに供物として食べ物などをおかせるよう、これを長子のみに受け継ぐようにと明記した。俺にも強く、この森から出ぬようにと言い残して行った。
それを寂しいなどと何事もない時は特に感じる事もないが、喧嘩してなかなか夕が戻ってこないなど言う状況になると父の言いつけを破ってでも、祠で待ち伏せをして人に会い話をしたいと言う事を思う位には人恋しくなってしまう。
だから、夕がようやく俺の前に姿を現した時には、喧嘩していたなんて事はまるでなかった事かのように抱きしめ、許してしまうと言うわけだ。
どんなに大喧嘩をしようが、俺達を縛り付けている永遠の愛によって、二人の呪いは変わることなく続いていた。
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