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第8話

「雪…やめてくれ…っ!」 キスで力の入らなくなった体を雪が軽々と両腕に抱き上げると廊下に出た。 「雪…?」 俺の呼びかけには全く答えず、一点を見つめたままで黙々と廊下を歩く。その視線の先に寝室が見えた。 そこに行くと分かった瞬間、自分がされるであろう事も理解して必死に雪の腕から逃げようと体をばたつかせるが、この時のために鍛えたのではないかと思うくらいにがっしりとした雪の腕は、俺のそんな抵抗をモノともせず部屋までスタスタと歩き続け、バタンと扉を開けた。 「やめろ!俺には…」 部屋に入ってベッドが見えた瞬間、ゾッとした俺が大声を出して雪を止める。しかし、その言葉を最後まで聞くことなく、ベッドに近付きながら雪が続けた。 「夕がいる、だろ?でも、俺はそれでも構わない。だいたいあんたと夕は呪いによってそう言う関係なだけだろ?そんなの変じゃないか?!本当はもうとっくに二人とも心変わりしているかもしれないけれど、呪いによって愛し合っていると思わされているなんてさ。」 「違う!少なくとも俺は違う。呪いをかけられたあの頃と同じように、いやそれ以上に今も夕を愛している!」 首を振って叫ぶように答える俺をベッドの前で立ち止まりじっと睨むと、ベッドにバスっと放り投げた。 すぐさま起き上がってベッドから降りようとするが、雪が一瞬早く俺の両手を掴みベッドに押し付けた。足の間に馬乗りになった雪の足が入り込み、俺の体は雪の体に押さえつけられて動きを封じられてしまった。 「雪…やめろ…雪っ!」 「もう、我慢も限界なんだ…あんたのその長い時間の内のほんの一瞬を俺にくれよ。あんたの心は夕のものだから…それは諦めるから。その代わりにあんたの時間とそして俺が生きている間だけ、この身体を俺にくれよ。宵…愛しているんだ…」 再び唇が合わさり、追ってくる雪の舌から逃げようとするが、あっけなくもすぐに捕まり絡め取られると、その気持ち良さに腰が揺れ出すのを止められない。 口の端からは涎が垂れ、息が荒くなっていった。 雪の手が唇が舌が俺の身体に新しい熱を落とし、拡散していく。熱くのぼせるような体の火照りに心臓が高鳴り、大きく早く鳴り響く鼓動と同じリズムで身体が揺れ動く。 雪のゴツゴツした長い指で体内がこじ開けられ、痛みと圧迫感に涙が溢れ出た。 「嬉しいなぁ。宵の初めてを俺がもらってるんだね。…俺だけが知ってる宵のここ。夕だって見た事がない宵のこんな可愛いいイき顔。俺だけの宵。」 身震いするような雪の言葉に逃げ出そうとした俺の腰をガシッと掴むと、雪はにまあと笑っていっぱい愛してあげると囁いた。 助けて…やめて…触れないで………これ以上俺を愛さないで! 何度も何度も口に出して雪に哀願するが、その度に俺の中をきつく抉り、奥を探るように突き、泣き叫ぶ俺の涙を舌で舐めとりながら、何度も何度も愛してると囁く。 幾度も声を張り上げ、それが掠れる頃には雪の背中に爪を立ててしがみつき、離さないでと懇願していた。

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