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第14話
「宵、愛してる。宵…宵っ!!」
はあはあと二人の荒い息遣いがしばらく続き、雪が俺の体の上からゴロンと寝返りをうつようにして隣に移動した。
腕が頭の下に差し入れられ、俺を抱き寄せる。
幸福の中で静かに流れていく時間。
ふとあれから結局は会いに行っていない夕の事が頭に浮かんだ。
だが、こんな穏やかな時間に言うべき事とは思えず、開きかけた口をそっと閉じる。
そうやってバレないようにしているのに、雪はそんな俺のちょっとした動きにも反応してくるから困る。
今回も、どうした?と言うように目を合わせてきた。
ここでなんでもないと答えてしまいたいところだが、雪はそれを絶対に許してはくれない。
体に聞くと言い出して、その何かを言うまでイかせてもらえずに、何度も何度も辛い思いをした事も多々。まぁ、辛いだけではなかったのは…まぁ、そうなんだけど。
それはそれとして、言わなければ…だし、言えばこの時間が微妙になってしまう。
どうしよう…
雪の目を見つめ返すとふふっと笑い出した。
「夕の事だろう?」
「え?なんで?」
「そろそろ気になる頃じゃないかなと思ってたからさ。まぁ、こう言う時に思い出されるのはちょっと気分いいとは言えないけど。俺以外の事を考えて抱かれていたのかなって思うし…」
雪の言葉に焦って、上半身を起こして猛烈に否定する。
「そんな事ないって!!ただ、ふと夕も好きだったなって思い出してさ…腕枕。」
「してあげてたの?」
雪の声色が明らかに変わった。俺の脳内で警戒音が鳴り響くが、何をどう言えばそれを解除できるのか俺にはわからない。それで仕方なく、頷いた。
「そう…」
あまりにもそっけない返事。
「え?それだけ…?」
言ってからしまったと思う。これが雪の今回の手だったのかと気がつくも、もう遅い。
例のにまぁと言う笑いを見た瞬間、全身の血が凍りついていくのが分かった。
「じゃあ、宵は俺にどう言って欲しかったの?それとも何をして欲しかったの?」
いつの間にか俺の上に覆い被さるようにして雪が俺を見下ろす。
顔を横に背け、何も…と言う俺の顎をぐいっと掴んで自分の方に向けた。
痛みに眉をひそめるが口に出しては言わない。
痛いとか、嫌だとか言ってももう雪の耳には届かず、それどころかその全てが雪の耳には気持ちいいに変換されて、俺をどんどん追い詰めてくると知っているから。
じっと黙ったままで雪の目を見つめる。
「ふうん、そう言う態度を取るんだ…宵、俺の扱いに慣れてきたよね?でもさ、夕絡みのことだけは俺、有耶無耶にする気ないから。それで、宵は俺になんて言って欲しかったの?」
「そんな、雪が思うほど大層なことじゃないって言うか、俺の思い違い?なんとなくさ、してほしいて言うのかと思っただけだよ。俺にもって腕枕をさ。本当にただそれだけ。でも、嫌な思いをさせたしさ、本当にごめん。」
できる限り軽く明るい感じで話すと、雪の下から這い出ようとする。
雪の怒りを覚ます為にも今はこの場から一旦離れたい。しかし、雪がそんな俺の肩を掴んだ。
「何、してるの?」
びくんと体が揺れる。それでも水が飲みたくてと言うと、思いもがけずどうぞと俺の上から退いてくれた。
裸のままでピョンとベッドから飛び降り、扉から出ていく俺に雪の声が追いかけてきた。
「宵、俺にも一杯持ってきて?」
「いいよ!」
俺にものを頼むなんてした事のない雪が、しかもこんな時に頼んだのだから俺も少しは警戒すれば良かったんだが、この時はもうこれで夕の事を聞かれるのは終わりだと思い、そこまで気が回らなかった。
2個のグラスに水を注ぎ、寝室の前に戻って中にいる雪を呼ぶ。
扉を開けてくれた雪の顔が俺の持っている水がなみなみ入ったグラスを見て、にまぁと笑った。
「雪、はいこれ。」
そう言って手渡そうとするが、雪が受け取ってくれない。
「雪?」
呼びかけにも答えず、俺をじっと見つめているのが居心地が悪く、雪に背中を向けてサイドテーブルにグラスを置こうとしたが、いきなり膝に痛みを感じ力が抜け、ベッドに上半身を投げ出すようにして崩れ落ちた。
こぼれそうになるグラスをなんとか持ち直すと顔だけ後ろに向けて雪に抗議する。
「危ないじゃないか?!って、雪、何して…あぁ…やめ…て…ぁあっ!くぅうっ!」
背中から覆い被さるようにして雪の手が俺の体の突起をあちこち弄り出した。
我慢できずに俺の手がふるふると震えると、グラスの水も俺の震えるのと同じリズムで、ぴちゃんぴちゃんと踊り出した。
「俺を嫌な思いにさせた罰。水をこぼさなかったら、許してあげる。」
そう言っている間にも雪の手は的確に俺の気持ちいいところを、俺の好きな触れ方で愛撫してくる。
腰が揺れ、先ほど枯れるほどに出したはずの下半身が、またも出したくてたまらないと俺に切なく訴えてくる。
「もしも…はぁああっ!水ぅ…っをこぼしたら…ひあぁっ!」
「言わなくてもわかるでしょ?むしろそうして欲しいんじゃなかったの?さっきもさ…ねぇ、本当は俺に夕の事で叱って、罰を…痛いのとか辛いのとかを与えて欲しかったんじゃないの?」
「違う!さっきは本当に違うんだ!…あぁあああっ!」
ぎちっと言う音と共に腹が圧迫され、それが動くたびに痛みと苦しみを凌駕する快感が俺の体を襲う。
グラスの水の大半はもう、雪の激しい動きの為にベッドを濡らし、その少なくなった水を守るようにグラスを掴んでいた俺の手が、我慢できずにベッド端を掴もうとしてグラスを手放した。
パリン、パリンと床にガラスの破片が散らばる。
あ、と言う間も無く雪が俺を抱き抱えて廊下に出て風呂場に入って行く。
前に、俺の恥ずかしい姿を映し出した鏡の前で俺の片足を鏡を跨がせるように上げると、俺と雪が一つになっている部分が鏡に映し出された。
背けようとする顔をぐいっと元に戻され、雪に見てろと念押しされ、仕方なく頷く。
ズプズプという音と共に、雪のモノが俺の開き切った部分から見え隠れすると、先ほど放たれた雪の体液がグチュグチュといやらしい音を立てて、雪ので圧迫される度に外に飛び出し、それが鏡を汚していく。
「雪ぃ!ごめ…んぁああああっ!ダメだ…ぁって…もぅ…イっ…ちゃぁああああああっ!」
大きくなる声と振り乱す頭。それでも許しなくイけば、何をされるかわからない恐ろしさから、雪に乞い願う。
「雪…もう…イかせ…っんん!」
「宵、今何を考えている?誰のことを考えてる?」
「雪…雪の事…だけぇえ!だから…もう許し…て…っぁあああああああああっ!!」
答えを聞いた瞬間に雪の腰が一層激しく動き出すと、俺はそれになすがまま、雪の手にしごかれて再び鏡を汚すと、そのまま雪の腕の中で雪で温かくなっていく腹を感じながら、深い意識の底に向かって行った。
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