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第26話

ずっと同じ日常。繰り返される永遠。 そんなある日、雪がいつもよりも上機嫌な顔で部屋の扉を開けた。 「宵〜、いいもの拾ってきたから見せてあげる。」 そう言って、一旦扉の向こう側に姿を消した雪が再び顔を出すと、その手には若い男の姿があった。 ベッドから上げられない顔を、それでも目一杯上げて目を見開く。 嘘だろ?いや、そんな…本当に?! 「夕っ…なのか?!でも、鼓動が、しなかった。」 あの時、顔も見られずに別れさせられた夕の変わらぬ顔と身体がそこにあった。 しかし、縛りがあった時には起こっていた鼓動がない。不思議に思いながら、それでも心は騒ぎ、顔はほころぶ。そんな俺の様子を見て、雪があーあと大袈裟にため息をついた。 「本っ当にイヤになる。こうなるってわかっていたのにさ。俺も大概お人好しだよな…宵に鼓動がないのは、その縛りがかなり弱い状況だからだと思う。ただ、俺があんなボロクズな状態でも魂をかけて破れないようにしたからな…今更だけど、魂なんかかけなければ良かったって後悔してるよ、本当に。それでも久しぶりに宵のこんな嬉しそうな顔が見られたから、まぁいいか…」 そう言って肩をすくめた雪の手を、未だに握ったままでいる夕に違和感を持って雪に視線を送る。 「何を疑っているの?これはまごう事なき本物の夕。顔も身体も夕のままでずっと生き死にを繰り返している。ただし縛りが薄まった為、自分が夕であることは全く覚えてはいないんだ。俺達とのあの最後の日の事もね。疑っているみたいだけど、今もこうやって宵を見ても何も思い出せていないだろ?だからそのまま自分の今の生活をしてればいいのに、何でだかもうずっと何十年も前から、あの家に生き返るたびに迷い込んで来る。その度に記憶を無くして元の場所に戻していたんだけど、流石にもう面倒臭くなってさ。それに…俺達のいいスパイスになりそうかな?って思ってさ。」 ほらと言って、俺が裸で括り付けられているベッドに放り投げるように夕を投げ飛ばした。 俺を抱きしめるように夕がベッドに横たわる。 「すいません。」 そう言って顔を真っ赤にして、急いで俺から手と身体を離すと、ベッドから降りようとする。 しかし、それよりも早く雪が夕の腕を掴んで俺のそばの予備の鎖に繋いだ。 「何をするんですか?!」 夕が青ざめた顔で身を捩りながら、大声で抗議する。 雪がその口を手で塞ぐと、シーッと指を口に持っていった。 「これから、いいモノを見せてやろう。宵、元恋人の前で俺にどうして欲しい?」 にまぁと笑う雪の顔を見て、何もせずに夕を解放して欲しいなんて言っても無駄だよなと思いながら、面白そうに俺と夕を交互に見ている雪にため息をつく。 許しのない絶望とされる事への期待。 熱っていく身体と脈打つ鼓動に背中を押されるようにして口を開いた。 「雪のしたいように…そう、夕がもう俺を忘れてしまいたくなるほどに俺を激しく愛して、虐めて、辱めて…欲しい。」 夕の顔を見つめたままで話す俺に、夕の方が真っ赤な顔になり俺を凝視する。 「ふぅん?そんなに宵は夕を守りたいのか…俺、嫉妬しちゃうよ?」 そう言って俺の体を指先でなぞる。 「ぅあっ!」 口をついて出た声に夕がやめてくださいと雪に抗議の声を上げた。 「うるさい口は気が散るから塞いじゃおう、ね?」 雪が夕の口を布で塞ぎ、天井からぶら下がっている首輪の予備に繋ぎ、少し鎖を上に上げた。 「んんっ!」 夕が苦しそうな表情で目に涙を浮かべて頭を振る。 そんな姿にダメだとわかっていながらも興奮する気持ちを抑えられず、鼓動が高鳴る。 それをにまぁとした笑いを浮かべて見ていた雪が、声を上げた。 「宵ってば、やらしー変態さんなんだね?夕の苦しそうな顔を見てこんなに元気になっちゃうなんてさ…許せないな俺。」 そう言ってギラッとした目で俺を見ると、痛いくらいに乳首を指でつねり、くすぐるように股間を触る。それだけで俺の身体はぞくっと反応し、動かせない身体の中で唯一中心が天に向かって起き上がる。 「くはぁっ!」 大きな声と共に仰反る背中。 雪の笑い声と夕の蔑むような突き刺さる視線を痛いほどに感じて、ぶるぶると腰が震えた。

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