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第28話

「宵、起きて。宵!宵ってば!起きないと、夕がまたどこかに行っちゃうよ?」 どこかに…夕が…また!? 目を開けて、周囲を見回すとそこには俺の横に座って頭を撫でながら見下ろしている雪の姿。 先程までの地獄絵図のような部屋は、それが嘘だったかのように静かで、吊るされるように立たされていた夕の姿もなかった。 「夕は?雪、夕をどこにやった?」 頭を振って、雪の手を払いのけて食ってかかると、くすくすと笑いながら大丈夫と言って、再び俺の髪を撫で始めた。 「何が大丈夫なんだよ?夕がどこかに行っちゃうって、そう言って俺を起こしただろう?あれは嘘だったのか?」 「そうじゃないんだけどね。あのさ、俺のことってどう思ってる?」 「はぁ?!嫌いだし、憎いし…でも、嫌になるくらいに…おまえがいなくなる事を考えると苦しくて、辛くて、でもやっぱり逃げたくて、なのに捕まえて欲しくて、それで…愛してる。」 ふふっと笑った雪が俺の唇に自分の唇を合わせた。 甘くて熱い舌が俺の舌を溶かしながら一つに溶け合っていくような、頭が痺れるようないつもとは違う甘いキスに、我慢出来ない足がシーツをずらしていく。 「ゆぅきぃ…っもちいいよぉ…雪ぃ…」 自分でもバカみたいに甘くて舌ったらずな声に、それでももっともっとと甘える俺に、雪は可愛いよと囁きながら、その熱い舌で身体を溶かしていくように舐め始めた。 「ゆっ…きぃっ!とけちゃう…俺の身体…とけちゃうよぉ!」 ビクビクと俺のそそり立つ敏感な部分を美味しそうに舐めながら、雪の指が、背中に回って俺の中にそっと入ってきた。 「ぁあっ!雪ぃ、そんな、優しいの…おかしくなる…はぁあああっ!」 いつもは痛いと言ってもやめてくれないくらいに激しい雪の指が、今は俺を労るかのように優しく柔らかく、俺の中を刺激する。 それがむず痒く、物足りなくて、甘い声で雪の名を呼んで切なげに腰を揺らす。 舌で舐めながら、雪が頭を振ってダメだよと言うが、俺はどうにもならないこの切なさをなんとかして欲しくて、雪に涙を流して哀願していた。 「雪ぃ、雪のちょうだい!お願いだから、雪ので俺を突いてぇ!」 その時、雪が合図を送るようにパチンと指を鳴らし、扉が開いたようだが、俺にはそれに気がつくだけの余裕はなかった。 「ねぇ、宵?そんなに俺のが欲しい?」 雪の誘うような言葉に必死で頭を縦に振る俺を見て雪の目が妖しく光った。 「だったら、お願いしないと…どこに、何を、して欲しいのか…分かるよね?宵なら…」 いつもなら、そんな馬鹿げたことと一蹴していたかもしれない。それでも今日は、あまりにも優しすぎる愛撫に疼くだけ疼かされた身体も頭もどうにもならず、我慢も思考も投げ捨てて、すぐにでもこの全てに終止符を打ちたかった。 「お願い!雪のその大きいので俺の奥まで突いてぇ!突き刺してぇ!」 それなのに、雪は頭を振るとにまぁと笑いながら俺にもう一度やり直しと囁いた。 「何で?」 絶望するような俺の顔を見て、大丈夫、宵ならできるよと言って、俺の中の指を増やしていく。それでもそれはただ疼きを増やしていくだけで、身を捩り、腰を動かし、何とか強い快楽を得ようとするが、それは俺の横を通り過ぎていくように、わざとズレたところを触れるだけで与えられないまま。 「雪ぃ!もっと、強いの、激しいの…欲しい!」 「だから、お願いするんだよ、宵。お願い…ほら?」 舌はいつまでも舐めるだけで、それ以上の刺激はくれない。 指も俺のいいところをずらして、触れるだけ。 おかしくなりそうな身体が頭から理性も羞恥も捨てさせた。 「お願い…雪のその大きいのを俺のゆるゆるの穴に入れて欲しい…雪、俺に雪を…下さい。…お願い………します。」 それでも、最後の一言はなかなか言葉にできず、ようやく言葉として口から出すと、雪はにまぁと最大限の笑みを浮かべた。 「これが今の宵だよ!おまえの好きだった宵はもういないんだ!俺にひれ伏し、願うこの宵が、俺を、俺だけを求め愛するこの宵こそが、今の宵なんだ!」 一瞬の静けさの後、夕の絶叫のような悲鳴が部屋に響き渡った。 「いやぁあああああああああっ!」 魂の壊れる音がする。生命の終わる音がする。その音を聞きながら、それでも俺は雪の腰に揺さぶられ、奥まで突かれて喘ぎ快楽にその身も心も全て委ねて、雪の名を叫び果てながら涙を流していた。

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