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第37話

「今日からしばらく、宵がいいと思うまではここで暮らして?あと、これが召使い。宵の好きなようになんでもどんなことにでも使っていいからね。もういいと思ったら俺の名前を呼べば、いつでも迎えにくるから…それじゃあ…」 そう言うと雪は俺にそっとキスをして、一人の男性を残してスッと消えた。 「宵…様…。しばらくの間、僕が宵様のお手伝いをします。よろしくお願いします。」 雪が消えた後をぼーっと見つめていた俺に、召使いだと言って雪が置いていった男が話しかけてきた。 「うん…分かった。」 それだけ言うと、久しぶり…いやもう何十年ぶりだろうと言うくらいに久し振りに自分の足で歩いてベッドに向かう。 「あっ!」 流石にそこまで久しぶりだと足はガクガクするし、体もフラフラするしで、バランスを崩して床にへたり込んだ俺に召使いの男がすぐさま駆け寄り、肩に担ぐようにして俺を立たせてベッドに座らせてくれた。 「ありがとう…ずっとベッドにいたから、歩き方も忘れちゃったみたいだ…」 「…あのっ!僕のこと…いえ、何でもないです。」 そう言って召使いは目を伏せて黙ってしまった。 微妙に重苦しい空気が流れ、どうしたらいいのか、それこそ何百年も雪としか喋っていないので、それ以外の人とどう喋ったらいいのか分からず、焦る心からベッドに潜り込もうとした俺に召使いが口を開き、その沈黙を破った。 「宵!分からない?僕だよ!夕だよ!!」 いきなり名前を呼びつけられ、自分のことを必死に指でさして、俺の顔の前にくっつけるように顔を近付けてくる。 「え…えぇと…夕?って言うの?それが君の名前?」 「そう。僕は夕…ねぇ、本当にわからないの?僕のこと、僕と宵のこと…本当に忘れちゃったの?」 泣きながら俺の胸に顔を埋めて喚く召使いにどうしたらいいのか分からず、肩を掴んでその身体を引き離そうとすると、召使いの腕が俺の手を逆に掴んで、ベッドに押し付け、俺を仰向けに押し倒した。 「おい!何をっ!?」 「あいつが、雪が何で僕の記憶を再び戻したのか、何で宵と二人きりにしたのかなんて僕には分からない!でも、僕は宵を思い出して、宵を愛し、愛されていた事を思い出したんだ!ねぇ、宵… 僕を思い出してよ…僕を愛してくれた…あの日々を思い出してよ…」 そう言って、俺に跨ったままで自分の着ている服を全て脱ぎ去ると、呆然としたままでいる俺の下半身を露出させて、突然自分の口に咥えた。 「くぅっ!…って!待ってって!おい!やめっ…はぁああ!」 「宵はこうやって吸われるの弱いよね?それと、先っぽを舌先で…こんな風に…」 「ぃあっ!あっ!…それ…っくう!イくぅっ!!」 身体から抗う力がなくなり、夕の口の中に放ちそうになるのを、必死で止めるが、それも快楽には勝てず、ついに見ず知らずの男の口の中に背中を仰け反らせて果てた。 口の中に頬張った俺の体液を、両手をくっつけてその中に出すと、今度は俺の腹の上にこぼして指で掬った。 「な…に、する気…だ?」 「準備だよ…久しぶりだからね…しっかり解さないと…ぁああ!」 そう言って、自分の背中に体液の付いた指を回すと、キツそうな蕾をこじ開けるようにゆっくりと入れていく。 「はぁあああ!宵、見てぇ!僕の…ここ…宵の為だけの…あっ!…ぅうくぅっ…宵の…ここに…入れ…ってぇえええ!」 指を増やし出し入れしたせいで、そこは誘うように俺の前でひくついているのが見えるほどに解れていった。 「俺は…俺は雪としか…雪に愛されたことしか…」 「違うよ…宵は僕を愛していた。雪に会う前は、宵は僕の宵だった。僕を愛してくれた…これで…ん…んんっ!あっ!はぁ…ああああああっ!」 そう言って、俺の下半身に手を添えると、夕はそれをほぐした自分の蕾にあてがい、ゆっくりと腰を落とした。 「僕の…中、思い出し…てくれた?宵の…僕の宵が…僕の中で、また…僕を愛してくれ…てる…宵…もっと!もっとぉ!!」 夕の動く腰に煽られた俺の腰も自然とその動きに重なり、夕の腰を掴んでその奥に届くよう、夕に煽られるがままに抉り突く。 二人の息が荒くなっていき、体も声も一つになっていくように昂り溶け合い、俺は夕というこの男の言うことが真実ならば何百年振りに、そして俺の記憶のある限りでは初めて他人の胎内に体液を放った。 「思い…出してくれた?」 俺の胸にぺたんと身体をつけた夕が尋ねるが、やはり彼が誰なのかを思い出すことはできず、すまないと謝罪する。 夕は一瞬悲しそうな顔をしたが、すぐに微笑むと、 「いいんだ…もっと僕と愛し合おう?もし、宵が嫌でなかったら…そしたら、僕の事を思い出してもらえると思うんだ!…ダメ…かな?」 俺の知らない俺を知っている夕… 「俺も俺を思い出したい。夕?との事とか…だから…っ!」 「うん!…ねぇ?早く思い出せるように…もう1回…ね?」 そう言って、再び俺の上で腰を動かし、喘ぎ声を上げ始める夕の腰を掴んで、俺も腰を動かし始めた。 すーっと開いた扉の隙間から、にまぁとした口が覗いていたが、二人共それに気が付く事なく、互いの身体を貪り合うように抱き合っていた。

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